ラグナロクオンラインと思い出話

ラグナロクオリジンというスマホゲーがリリースされていた。ラグナロクオンラインというかつて絶頂の人気を誇ったオンラインゲームのスマホゲーである。ラグナロク関連のスマホゲーは何度かリリースされていて、これも、正直長期でやるつもりはないが、礼儀としてダウンロードしやってみた。

で、やったが……スマホゲーとしてかなりアレンジされつつもだいぶROの雰囲気が残ってて、ゲームとしてどうかはともかくノスタルジーが刺激される……。全体チャットでギルド入りませんかーとパーティ組みませんかーとしきりと声がとびかっているところとか……。

唐突な思い出話

この世界では昔ラグナロクオンラインというゲームが流行っていた時期がある。僕も例に漏れずハマっていて、危うく人生が破壊されるところだった。明らかに現実で人と遊んでいるよりラグナロクオンライン(RO)の中で人とモンスターを狩り、対人戦で戦っていたほうが楽しく、起きている時間のほとんどをこのゲームの中で過ごしていた。そういう人間がたくさんいた。

当時、オンラインゲームはすでにUOなどいろいろあったが、僕は未プレイで、やることといえばせいぜいいろんなトランプゲームだったり原始的なビリヤードだったりが遊べるハンゲームというゲームポータルで、どこの誰とも知らない相手と無課金の半袖クソアバターを使いながら大富豪やら何やらを延々とやり続けることぐらいだった。当時の僕は小学生だったか中学生だったかで、友人はみんなバスケなどの部活に入って僕は運動したくなかったので友達を失い、孤独な日々を過ごしていたので遊び相手が必要だった。

友達と遊びたければリアルで集まらなければならないのが常識の時代である。みんなで集まってスマブラなどをしていたが、みんなバスケをしている……。そうした孤独を癒やしたのがハンゲームだったが、ハンゲームというのはなんというか殺伐とした世界である。半袖のわけわからんやつしかおらず、会話が成り立つような成り立たないような謎の世界である。それでも人と家にいながらにして遊べるのが楽しくてずっとやっていた。

そんなあるとき、ハンゲームのチャットで誰かがROについての話をしているのをみかけた。おもしろいといっているのではなく、いまROでこんなことをやっているんだよね〜というただの雑談だったが、なんでも「下水道でゴキブリを殺しているんだよね〜〜一緒にこないか??」みたいな話だった。「下水道でゴキブリを殺す?????」、普段無味乾燥な半袖たちと大富豪で勝った負けたを繰り返していた僕はそれは凄い世界だと思った。下水道にいけるのもすごいがそこでゴキブリ?? を殺すのか?? と。

トランプじゃなくて下水道でゴキブリを殺してもいいのか??? そうしてすぐにダウンロードして始めたのだが、その時が確かROのβ1時代だっただろう。確か僕が始めた時はサーバは3つ、Chaos、Loki、Irisの3つで、Lokiを選択。そこに入って、僕は衝撃を受けることになる。

今でこそ当たり前だが(そして当時いくつも先行のオンラインゲームがあったからROが別に最先端というわけでもないのだけど)、自分が一個のキャラクターを操作して、周りに大量に歩き回っている人間がいるのである。もしかして、これは全部本物の人間が入っているキャラクターなのか?? これが全部?? 全部話しかけたら何かを返答したり、無視してくる人間なのか?? それまで無味乾燥な半袖たちと大富豪しかしてこなかった身にはすべてが衝撃的であり、明らかに現時点を含む全人生の中で最大の衝撃であった。たまたま同じモンスターを殴ってしまったりしたら相手が謝ったりエモートを返したりしてくるのである。生きた人間がいっぱいいる!!!!

世界観が変わるほどの衝撃を受け、異様な速度でハマりこんでいくことになる。βテストや初期の頃のROには異様な熱気があったのは間違いない。バグも多く、同時接続人数も多く、頻繁に重くなった。仕様も整備されていなかったが、その分助け合いの精神がプレイヤー同士の交流を生んでいた。バグを利用した狩りなど、初期の思い出は尽きない。ゲームマスターにも個人の性格が出ていて、ひょうきんなゲームマスターだったり真面目なゲームマスターだったり、ゲーム内のアナウンスもまた交流のひとつとなっていた。

その後、何年もの間ROの世界の住人となり、ギルドを結成し毎週攻城戦に熱狂し、PvPで暴れまわりしたらばや2chで晒され……みたいなことを繰り返していくことになるのだが長くなったからいったんやめよう……。人生のかなりの期間を費やしたが、それ以上に楽しい時間でもあり、後悔はまったくない。人生でここまで何かにハマることはおそらくもうないだろう。

いまはインターネットが当たり前に繋がっていて、オンラインゲームもオンラインゲーム的な要素もあらゆるところで当たり前になっているから、今は僕が感じたような「ま、ま、周りを生きた人間がいっぱい動いてる!!!!! これ全部リアル人間なのか!?!?!?!」みたいな衝撃を受けることってないんだろうな(全然わからんが……)。それは素晴らしいことだけど、同時にあの衝撃が味わえないのは少し悲しい。違う世代には違う世代の衝撃が生まれるのだろうけれども。

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