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【イベントレポート】「行けばなにかが生まれるかもしれない場所」コミュニティースペースMADOのこれまでとこれから

2023年4月、株式会社Huuuuのオフィス「MADO」はオープン一周年を迎えました。MADOは「仕事場として使えるコミュニティースペース」を掲げ、カメラマン、デザイナー、ライター、編集者、はたまた猟師など、長野を拠点に活動するプレイヤーたちが集うコミュニティとして育ってきました。
MADOメンバーは現在約20名。仕事をしにくる人、雑談をしにくる人、メンバー同士で交流できるイベントのみに参加する人、関わり方は人それぞれです。

オープンから一年を記念したイベント「MADOGIWA meetup. ーコミュニティスペースの現在地ー」では、「ぶっちゃけ!MADOの実態!」をテーマにトークセッションが行われました。
お話いただいたのは、株式会社FARO・CK代表取締役の緑川正樹(みどりかわ まさき)さん、irodorizm代表のうえやまあやさん、コピーライターの小林拓水(こばやし たくみ)さん。そして聞き手は、MADOのコミュニティーオーガナイザー・くわはらえりこ。

MADOメンバーたちは、普段どんな風に利用しているのか? MADOを通して起きたポジティブな変化や、ネガティブなことって? コミュニティスペースって一体なんなの? などぶっちゃけトーク。MADOというコミュニティの空気感が伝わるトークセッションとなりました。当日の様子をレポートします。

オフィスとしては利用していない? 「コミュニティスペース」としてのMADOの利用法

くわはら 皆さんは、まだMADOができたばかりの初期の頃に飛び込んできてくださったメンバーさんですよね。まず、皆さんが普段どうやってMADOを利用しているのか、改めて教えてください。

緑川正樹(株式会社FARO・CK 代表取締役)
千葉県出身。大学卒業後、音楽活動と並行してweb制作を始める。 十数年のフリーランス活動を経て法人化。webサイトの企画から構築までを行う。 コロナ禍によるリモートワークを機に東京から長野市へ移住、週に一度都内へ出社する生活へシフトする。 趣味はたまに飲むお酒と音楽。

緑川 僕は週一で東京に行っていて、あとは自分のオフィスで仕事をしているので、あんまりMADOでお仕事はしていなくて。主にランチ会とか交流会などのイベントに参加していますね。

くわはら 去年の夏頃、「MADOメンバーでキャンプをしたい」って言ってくれたのは緑川さんでしたよね。せっかくアウトドア好きのメンバーがいるから、みんなでしようよって提案してくださって、夏のキャンプイベントが生まれたんです。うえやまさんも、MADOの利用の仕方は緑川さんに似ていますよね。

うえやま そうですね。私にとっては、OKMデイというランチ会があることのプライオリティが高かったです。それを目当てに入ったので、オフィスとして使うというよりは、ランチ会を中心にイベントに参加していますね。もちろん、友だちとご飯を食べることもあるけど、そうじゃない横のつながりがご飯をきっかけに生まれるのがうれしくて。

うえやま あや(irodorizm 代表/プレゼンター)
大阪府出身。長野移住6年。移住直前は音楽の専門学校(広報部)にてキャリアとデビューをサポート。「うえやま先生に写真を撮ってもらうと、オーディションに受かる」と噂になる。今も写真や映像、プレゼンのスキルを軸に、人やお店などの叶えたい像を形にする。二級知的財産管理技能士。金髪の大学講師に憧れる。

くわはら みんなで食べるご飯っておいしいですよね〜。拓水さんは、拠点が東京ですよね。長野でお仕事がある時にMADOに寄ってくれているイメージがあります!

小林 拓水(toishi/コピーライター)
長野県松本市出身。長野と西東京で働くフリーランスのコピーライター。屋号はtoishi。経営理念やVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)の策定、ネーミング、スローガン、採用コンセプト、サイトライティング、取材記事など言葉にまつわる仕事をいろいろと。パンが好きです。

小林 そうですね。長野で仕事があるときに、みんなとお話がてら寄らせてもらっています。それから、焚き火BBQみたいなめちゃくちゃ行きたいイベントに関しては、嫁に頭を下げて参加しに来ています(笑)。

くわはら 拓水さんは、年末に行ったイベント「MADOBE SPEECH」のためにわざわざ東京から来てくださって、「終電があるから!」って帰られてましたよね……! 積極的にMADOに関わってくださって、ありがたいなと思っています。

知り合いがゼロの状態での長野移住。MADOをきっかけにコミュニティが広がった

くわはら MADOの使い方を伺ったところで、MADOを通して起きたポジティブ・ネガティブな変化を聞いていきたいです。プライベートもそうだし、お仕事の面でも!

緑川 ネガティブなことは、まずないですね。MADOはそもそもそういうコミュニティじゃないと思っています。自分で参加したいタイミングで参加するという感じなので、マイナスなことがあまりない。ポジティブな変化は、MADOをきっかけに知り合いが増えていったことですね。僕は知り合いがゼロの状態で移住してきたので、初めは長野にコミュニティがまったくなかったんですよ。

くわはら 私は、皆さんの交流を図るために「あれします、これします!」と積極的に声をかけるんですが、緑川さんは「東京行くの?俺もその週に東京で仕事があるから、集まって飲もうよ」とか、自主的に行動されていますよね。勝手にみんなと仲良くなっている印象があります。

緑川 (笑)

くわはら MADOには緑川さん同様にWEB系のお仕事に関わっているメンバーが複数人いるんですが、仕事の相談もよくしていますよね。それがすごくいいなぁと思っていて。

緑川 そうですね。最近は、実際にMADOメンバーにお仕事を依頼しました。せっかくクリエイティブ系の仕事の人が集まっているので、プライベートだけではなくてお仕事も一緒にしていけたらいいな。

くわはら MADOコミュニティで実際に仕事のつながりができたと聞いたとき、すごくうれしかったです! うえやまさんはどうですか?

うえやま うーん、ネガティブな面を言語化するのは難しいですね。例えば、オフィス機能は意外と使わないな、とか? たまに仕事に行くと、意外と人がいなかったり、すれ違いになっちゃったり、みんな忙しそうだったり……。でもそれって、ただ単に残念なだけでネガティブさではないんですよ。

「行けばなにかがある場所」であるMADO。ゆるやかな心地よさの中でチャンスが生まれていく

うえやま ポジティブなことも、「MADOから仕事につながった!」みたいなわかりやすいものじゃないと思うんです。それよりももっとゆるやかな、「MADOメンバーであることの心地よさ」がいいですね。例えば、えりこさんに似顔絵を描いてもらえるなど、コミュニティの一員感が得られるんです。グループ感、家族感がある。そのゆるやかなコミュニティのなかで、いろんなチャンスが生まれていく。

くわはら そういえば、うえやまさんと緑川さんは、同じバンドに参加していましたよね。

うえやま そうです。MADOが入っている複合施設「R-DEPOT」が母体となったバンドのプロジェクトがあって。それも別のMADOメンバーに誘ってもらったことがきっかけでした。他にも、テレビで喋ることになったり、メンバーの方が私に宣材写真を撮る依頼をくれたり……。

くわはら うえやまさんも、緑川さん同様に移住者ですよね。長野でコミュニティが欲しい気持ちがあって、MADOに入ってくださったんですか?

うえやま そうですね。ぶっちゃけ、関西にいた頃より、長野にきてからのほうが友達ができました。うーん、でも、MADOのコンセプトに「寂しさを持ち込む場所じゃない」っていうのがありますよね。私はあれがいいなぁと思っていて。

くわはら 「人生の孤独を持ち込まない」ですね。

うえやま そう、別に寂しいわけじゃないんですよ。つながりが絶対にほしいわけじゃない。でも「MADOメンバーとして長野にいること」自体が魅力的な気がします。

くわはら MADOのコミュニティは、ゆるやかにつながっているのがちょうどいい気がします。登録してからなかなかオフィスに来れていない人もいるし、「雑談したくて来たけどオフィスに誰もいない……」みたいなことが起きてしまわないか不安な部分もあって。でも、良くも悪くもその偶発性を面白がってもらえたらいいな、と思っています。実際にそこに理解がある入居者さんが多いから、ゆるやかにちょうどいいコミュニテイになっているんじゃないかなぁ。いやぁ、皆さん、本当にありがとうございます。

緑川 締まっちゃった! 拓水くんがまだ喋ってないよ!(笑)

小林 僕も、「ゆるやかさ」はまさにそうだなと思っています。コミュニティによっては、常に人がいて、少し参加できない期間が空くと置いていかれてる感が生まれてしまうと思うんです。でも、MADOにはそれがない。僕は2〜3ヶ月顔を出せないこともあるんですが、パッと行ったからって気後れすることがない。その距離感がすごく心地よいです。

MADOは、「わからなさ」を愛せるおもしろい人たちが集まるコミュニティ

小林 それから、長野に来る理由ができるのがありがたいですね。これまで、長野にくる目的は仕事だけだったんです。せいぜい「帰る前にカフェでも寄るか」くらいだったのが、MADOという「行けばなにかあるかもしれない場所」が一つあるだけで、長野にいたいな、いてもいいかなって気持ちになれる。その「なにかあるかもしれない性」があると、長野にくるのが楽しみになります。なにかが生まれてもいいし生まれなくてもいい、その感覚が心地よいです。

くわはら MADOにくるたびに、「早く長野に移住しない?」って言われていますよね(笑)。拓水さんのように、二拠点だったり、移住を経験している人がMADOのコミュニティに入って、実際にやっていけるのかお試しする、みたいな場所として使ってもらえるものいいのかも。 

小林 僕みたいに、東京にいながらMADOに登録してる人も増えてきているのかな?

くわはら そうですね、現状だと拓水さん含め3名いらっしゃいます。中には、普段ずっと東京にいて、スノーボードのシーズンだけ2.3回くらい顔を出す、ワーケーション的な使い方をされている人もいますね。
うーん、それくらいの通う頻度でも、ここに居続けたいと思ってもらえるMADOの良さって……、一体なんなんだ?!

一同 (笑)
  
くわはら もちろん、胸を張っていい場所だとは言えるんですよ! でも、もしHuuuuやMADOのことをまったく知らない人に勧めるとしたら、具体的にどんなことを伝えたらいいんだろう、って。

緑川 一つ確実に言えるのは、えりこさんがとてもいい人!

一同 (拍手)

緑川 皆さんトークセッションを聞いていてわかったと思うんですけど、こういう方なんです。居心地がいいんですよ。

くわはら ありがとうございます……! うえやまさんはどうですか?
 
うえやま うーん、人に勧めるなら……。私は、MADOって誰にでも紹介できる場所ではないと思うんです。もちろんいい意味で! 合う人にはめっちゃ勧めたいけど、誰でもいいわけじゃなくて、見えないフィルターがあるというか。

くわはら たしかに、そうなんです。MADOメンバーになりたい人とは必ず面談をしていて、バイブスが合うかを見ているんですよ。面談の際にお渡しする施設の建物概要書には、目的やターゲットなどと並んで「一癖」という欄があって、「心配すな、でも安心すな」っていう 代表である柿次郎さんの好きなラッパーのリリックが書いてあったりする。そういうニュアンスを解釈して、面白がってくれる人に来てほしいんです。

小林 MADOは、コワーキングスペースじゃないんですよね。だから、紹介するとしたら「面白い人たちがいる場だよ」としか言えないんじゃないかなぁ。なにかよくわからない場所。でも、それでいいと思うんです。「わからなさ」をちゃんと愛せるかどうかが大事なのかも。

みんなのスキルを持ち寄って、なにかが新しく生まれていけばMADOはきっともっと面白い場所になる

くわはら どんなコミュニティになるのかわからない中で出発してきたMADOも、一年が経ってようやくどういう場所か少しずつ可視化されてきたと思います。ここで改めて、これからMADOはどんなコミュニティとして育っていったらいいのか皆さんに相談したいです。

緑川 うーん、そうだね。せっかくいろんな面白いクリエイターたちが集まっているので、MADOメンバーとしてものづくりができたら面白いですね。マネタイズは一旦置いておいて、なにか面白いものが作れたらいいな。

くわはら 他のメンバーが企画を持ち込んできた「ブレスト会」もそうですよね。プロジェクトになるかは別として、脳みその筋トレとしてアイディアを持ち寄って、それがいずれ仕事につながっていったらいいねっていう。

うえやま 第一部、第二部のトークセッションを聞いて、東京のクリエイティブを長野に持ってこれたらおもしろいなぁと思いました。せっかくMADOにはいろんなスペシャリストがたくさんいるから、いきなり案件にならなくても、まずは部活的な動きを一歩一歩やっていけたら。

くわはら 作ろうとすると作れないから、無理して作らないのがいいかもしれませんね。そこがMADOの良さでもある気がします。いろんな業種、いろんな意見が集まってゆるやかに何かがうまれていく、単に異業種交流会じゃないところが逆に居心地がいいのかも。

うえやま 逆に仕事ではずっと頭使っていて、目的意識が強すぎるから、もっと遊び心がある部活的なことができたらいいですね。 

小林 僕も、ちっちゃい部活というか、コミュニティ内コミュニティみたいなものがあると素敵だなと思います。いろんな知見を持ったさまざまなスペシャリストの方々がいる中で、その世界を覗かしてもらうってとても贅沢な体験ですよね。そういう機会がもっと生まれたらうれしいし、自分も提供できることがあったら提供したいです。

くわはら メンバー交流会も、飲み会だけじゃなくて、メンバーのスキルを共有する学びの場にしていきたいと思っています。前回の交流会は、WEBデザイナーのおうがいさんが「Raggamuffin」というイケてる遊漁船のHPを作ったので、制作秘話を披露していただきました。これは元々、おうがいさんが「俺こんなかっこいいサイト作ったよ!」ってお話してくれたのがきっかけなんです。メンバーから、「自分はこれができます!」ってアピールをしてくれたらうれしいし、教えてほしいなと思います。

小林 僕、国語の現代文がめっちゃ好きなんですよ。大人になってからも身に付く、「コピーライターが教える現代文講座」とかしてみたいですね。

くわはら やりましょう!そういうみんなのスキルをシェアしあって、ゆるやかにプロジェクトになっていったらもっといいコミュニティになるのかな。皆さんも「私これできます、したいです!」みたいなことがあったら、どんどん教えてください。MADOとの関わり方は、本当に皆さんそれぞれなんですが、これからも長野で活動している面白い人たちが集まる場所になっていったらうれしいです。二年目のMADOも、どうぞよろしくお願いします!


構成:風音
撮影:吉平 仁

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