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学習機会剥奪児童生徒60万人!?

(今回は、少し数字を使ってアクロバティックな推論を行います。)

文部科学省定義による不登校児童生徒数

最新の文部科学省の調査によると2018年度の不登校小中学生の総数

16万4528人

ー小学生:44,841人・中学生:119,687人ー

です。

文部科学省は不登校を「何らかの 心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、 登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間 30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を 除いたもの」と定義しています。しかし、僕には、この定義の仕方では一体何が問題なのかがクリアに見えてこないように思えます。

不登校の実質的問題点

そこでもう少し突っ込んで不登校の問題を定義しなおすと、それは、「学校に行っていないことによって子どもたちが得られるべき学習機会を剥奪されてしまっている」ということになると思います。「登校している/していない」こと以上に、こちらの方が問題として焦点化されるべきでしょう。

そして、一旦そのように不登校問題の焦点を設定したうえで考え直すと、「得られるべき学習機会を剥奪されてしまっている」子どもたちは、上の文科省調査の数字として表れる不登校児童生徒以外にも大量に存在しているように思われます。

そもそもどうすれば登校?

僕がフリースクールなどで学習支援をしている中学生たちは「昼過ぎに学校に行く」「保健室で過ごしている」「スクールカウンセラーの部屋で過ごしている」などと話してくれます。実は学校に一瞬でも顔を見せれば「登校扱い」になり、欠席としてカウントされることはありません。(朝に顔だけ見せる登校の仕方を「タッチ登校」と呼んだりもします:先生とタッチだけして帰るから)。

しかし、当然ですが、タッチ登校や顔見せ登校はもちろん、保健室で過ごしていても先生がしっかり勉強を教えてくれるということはほぼありません。つまり、学校に行っていても、出席扱いになっていても学習機会が奪われている子どもたちは膨大に存在するのです。

実質的な学習機会剥奪児童生徒を導き出す

それで、どうすればこの実質的に学習機会が奪われている子どもたちの人数を把握できるか考えていましたが、先日「そういえば日本財団が去年実施した不登校に関する調査があったな」と思い出し、再度目を通したところ、不登校予備軍の子たちの割合から学習機会剥奪児童生徒の推定値が導きだせるのではないかと考えました。そうして導き出したのが下の結果です。

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結果:59万275人もの小中学生が得られるべき学習機会を奪われている可能性がある

ということに。


使った数値は日本財団の当該調査報告のうち

・学校生活をめぐる子どもの特徴(タイプ)6群

・【現中学生に聞いた】「中学校生活」タイプ別ボリューム

・【現中学生に聞いた】「小学校時代」タイプ別ボリューム

の項目の②③④の割合と、文部科学統計要覧(平成31年版)の小中学生児童生徒数です。(計算方法は文章最後の注をご覧ください。)

繰り返します。

今現在、日本では、約60万人もの小中学生が得られるべき学習機会を奪われている可能性があります。

もちろん、フリースクールや自宅学習をしている子たちもいるので、この全ての子たちが学習機会を奪われているということではありませんが、単純に「年間30日以上欠席している児童生徒」という観点からは見えてこない数字だと思います。

また、関連することとして、学習機会を剥奪されている子どもたちの家庭においてフリースクールなど公教育以外の学習ツールを利用して勉強ができる家庭は、当たり前ですが裕福な家庭の子のみです。塾やフリースクールなどに通える余裕がない子どもたちは放置されています。19世紀半ば以降の「近代教育=公教育」の目的の一つとして、貧富の差による教育格差を是正すること、そして教育格差から生じる生涯賃金格差を小さくすることがありますがすれば、21世紀の日本において、教室における学習機会を奪われている子どもたちの家庭だけを抜き出して考えてみると、そこには未だに前近代的な時空が広がっていると言ます。教室で授業を受けられない子どもたちは、その子の家庭が裕福か否かで教育機会が決定され、当然の帰結として、貧富の差が拡大していくという未来が予想されます。

学校という場所のみを「公教育」を担う場所として位置付けるのを、そろそろやめにしませんか。

(終了)

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(↑学校生活をめぐる子どもの特徴(タイプ)6群)

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(↑【現中学生に聞いた】「中学校生活」タイプ別ボリューム)

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(↑【現中学生に聞いた】「小学校時代」タイプ別ボリューム)

*:上の日本財団の調査報告各シートの項目②③④の割合を2018年の小中学生の各総数に掛け合わせて推定人数を出しています。

*日本財団の調査のうち各シートの「①-2」を外しているのは、それだけでは、実質的に学習機会が失われていると言いにくいと僕が判断したからです。

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