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日本の食料生産について考えてみた

自分は園芸農家として白ネギの生産を行っていました。白ネギの旬と言えば鍋に代表される冬であると思います。しかし品種改良や栽培技術の進歩によってほぼ一年を通して日本国内のどこかで生産が出来るようになっています。普段買い物をするスーパーでも外国産白ネギを見ることはありません。業務用スーパーや外食産業で外国産の白ネギを扱っているところはあると思います。しかし全体量からしてごく少量だと思います。こうして考えると白ネギだけでみる食料自給率は100%に近いのではないのでしょうか。また毎日食べている主食の米も供給過剰で減反政策が行われています。しかし全品目でみると『日本の食料自給率は38%』にとどまっているようです。この食料自給率という数字は何なのか調べてみたので感想を交えて書いていきたいと思います。

品目別自給率

米:98%
野菜:73%
魚介類:61%
大豆:21%
牛・豚肉:15%
卵:10%
※農林水産省の品目別自給率を探し出せなかったので正確な数値かわかりません。

自分が一番に気になったのは、卵が10%となっていることです。外国産の卵なんて見たことがありません。
下から順に行くと牛・豚肉も15%とありますが、スーパーでみる限りは50%以上が国産でありそうな気がします。大豆についてはよくわかりません。
魚介類についてはブラックタイガーやフィレオフィッシュなどを考えると妥当のような気もします。
次に野菜ですが、国内での生産が難しかったり、年中出荷が難しい品目があるのだと思います。73%は少し低いような気がしますが多分そうなんでしょう。
米に関しては余剰米があると思うので実際100%を超えていると思います。計算の仕方で98%となるのかもしれません。

卵の自給率が10%である理由

実は流通している『卵の96%は国内産』だそうです。しかし『卵の自給率は10%』となります。この差である86%の国内産卵は自給率に含まれていないということになります。
自給率に換算される卵とは、『国内で生産された飼料』によって、国内で飼育された鶏が生んだ卵という考え方のようです。つまり卵自体は国内でたくさん生産していますが、その餌となるトウモロコシなどの穀物のほとんどが外国産だということです。
同じように牛・豚などの飼料も外国産が多いということです。

水稲や野菜栽培で用いる化学肥料の原材料も外国産が多いような気がするのですが、化学肥料を用いて栽培した農作物はそのまま自給率に反映されていると思われます。この考え方は卵の計算方法から疑問に思えます。

このあたりで自給率という言葉の定義がよくわからなくなってきました。

日本の食料自給率が38%の理由

実は食料自給率の計算の仕方には二種類あります。
①生産額ベース
②カロリーベース
ここまでの話で出てきた自給率というのは②カロリーベース食料自給率です。この自給率の特徴として、カロリーの低い野菜よりも、カロリーの高い肉の影響を受けやすいということです。いくら頑張って畑でナスやキュウリやコマツナを作っても自給率が上がることはないと思います。

世界でみても②カロリーベースで自給率を計算する国は日本以外にはほぼありません。ちなみに①生産額ベースで計算すると日本の食料自給率は66%となり、イギリスよりも高いみたいです。

いろいろと思ったこと

多くの人は『食料自給率38%』という数字を見ると危機感を覚えると思います。自分もそう感じるところがありました。しかし、実際に農業を始めてみれば、白ネギについてはほぼ自給率100%であり、時期によっては供給過剰で出荷制限までありました。自給率はそう簡単に上がるようにはできていないのです。

自分が思う食料自給率とは、国民全員の食料を自国生産でどれだけまかなえるかの尺度です。しかし、食料自給率は計算方法によって大きく変化してしまいます。だからこの『38%』という数字を増やすことには、大した意味がないと思います。
なので有事の際に国民全員の食料を国内生産でまかなうために今から行うことが出来ることを考えてみました。
・普段から旬のものや昔ながらの保存食などに親しむこと。
・普段から小麦より米を食べることで減反政策をやめること。
・化学肥料を減らし有機肥料を増やすこと。
・家畜の飼料を自給すること。
・流通の方法を見直し食品廃棄を減らすこと。
などがあると思います。

あと個人的に農業の世界に対して思ったことは、品質のいいものを作るために働きすぎだと思います。消費者やバイヤーの目が肥えるし、生産者や産地間で品質争いが激しくなります。そうなると単純に規格外野菜の量が増え、廃棄量も増えてもったないと思います。自分はそこまで働かなくていいのではないかと感じました。農家の働き方改革としてこんな考え方はどうでしょうか。

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