タケルは今日幸せな気持ちでムシャクシャしていた。
2045年AIが人間の知能指数を超えてからタケルは毎日幸せな気持ちでムシャクシャしていたからだ。
なぜならば、タケルは東京大学に合格できなかったからである。
タケルは東京大学で人を刺すか考えてしまっていた。
タケルにはシンギュラリティが分からなかった。
なぜならば、タケルの頭の中には承認欲求しかなく、東京大学に合格し他者にマウントをとる以外に人生の意味はなかったからである。
コケシは毎日ムシャクシャしながら幸せだった。
なぜならば、BI、ベーシック・インカムの導入によって毎日何もしなくても人生は幸せだからだ。
コケシお婆さんはSF小説を書いて毎日を受動的に楽しんでいた。
しかし、コケシには肝心のBIが分からなかった。
なぜならば、コケシの頭の中には政治しか無く、経済リテラシーが欠落していたからだ。
2045年、芋虫の群れたちは各人が各人のスマートな自宅に軟禁されておおらかにムシャクシャしながらも幸せを謳歌できる。
この2045年をちょうど20年前に出した日系ロシア人『ドストエフスキー波長ねぎ』がいる。
彼の思想はプロパガンダとして機能しAIとBIの美しいセカイは実現した。
ちなみにドストエフスキー波長ねぎはAIもBIも分かるし東京大学だし経済学部卒である。
そんな波長ねぎだが、ナイフで真っ二つになりかけるぐらいこれまでもかと包丁で刺された。
TVの収録終わりにTVに潜入した1人の暴徒により男性トイレで切り刻まれたのだ。
血迷ったのかわからないが、彼はちんこが出ているドストエフスキー波長ねぎを撮影しXにアップした。
ドストエフスキー波長ねぎは死ななかった。
奇跡的に命を吹き返した。
しかし、あの頃の陽キャでハイテンションで変なカツラを被った波長ねぎはどこにもいない。
どうやら日系ロシア人も嘘で本名は山田太郎だったし東京大学経済学部は本当だが、それ以上のそれ以下ではなかった。
ブチギレた山田太郎は陰キャにローテーションになり、逆ギレをしだし、犯人を告訴。
なお恐ろしいことに山田太郎を暗殺しかけた犯人・切島優吾は英雄として祭り上げられていた。
なぜならば、切島優吾は端的に表すと悪霊とは似ても似つかないぐらい冷笑そのものだったからだ。
ようするに、世間の人々はもう流石に気づいていた。
あのAIが分からないタケルもBIも分からないコケシも流石に気づいていた。
そう。
切島優吾はわざと山田太郎を殺さなかったこと。
続く
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