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さよなら江古田サッドカフェ

何かを失うとき、大きなことが起こるとき。そういった物事はいつも無礼なほど唐突で、あまりに突然であるがゆえに、妙に浮き足立ってしまう。「あれ、なぜ私はこんなときにワクワク、そわそわしているのだ?」と、よくわからない気持ちになることが多々ある。

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2017年3月11日、東京・江古田の名店「サッドカフェ」が閉店した。灯りのついたロウソクを並火けしで消すように、小声で閉店した。最後の夜もいつもと同じように、店内は暗く、料理は美味しかった。

別段、サッドカフェの誰かと仲が良かったわけではない。ただ、あの店の暗さや静けさ、距離感に救われた夜がいくつもあった。沈み込むようにタリスカーを飲んでタバコを吸うのが好きだった。0時を過ぎると飲み屋の選択肢が少なくなる江古田において、落ち着いてちゃんとした酒を飲めるサッドカフェは貴重な「大正解」だった。

特にこれといって何もせず19時になってしまった日。レコード屋で時間を潰し、近所に住んでいる友だちと駅前で待ち合わせをする。とんでもなく酒の濃い串焼き屋で腹を満たして、日付が変わったころに歩きだす。曲がり角から顔を出し、開いているシャッターに安心し、黒いドアを右手で引く。サッドカフェがあったころ、夜はさらりと軽やかで、木綿が飛ぶようにふわふわしていた。

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なんとその後、野方に昼のお店として再オープンしたとのこと!!!行きたいなぁ。

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※この投稿は自ブログ「鼻から蒸気吐く」、2017年3月14日投稿の記事の転載です。


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