千夜一夜奮闘記

映像と音楽を制作する仕事をしています。 だいたい夜中に書いています。 senyaichiyahuntouki@gmail.com

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最近の記事

『履くぜ!カンフーシューズ』

「地面にはたくさん氣が流れている。この靴を履くことでそのチャクラを足から吸収できる。だからこの靴はとても薄く作られている」 「ホンマかいな…?」 人生で初めて「カンフーシューズ」に出会った瞬間である。 横浜中華街の怪しげな雑貨店で中国人の店主が言ったこの説明はあまりにも抽象的で、何よりカンフーをやったことがない身としては謎だった。少なくとも当時関西から出てきたばかりの世間知らずのぼくらを納得させるだけの説明ではなかった。だけどまあ履きやすそうだったし、せっかく横浜中華街に観

    • 『「なんでもいい」わけがなくない?』

      「なんでもいい」という言葉がとにかく嫌いだ。 口にするのも嫌だし、聞くのも嫌いだ。耳にすると無性に腹が立ってくる。 嫌いな言葉や表現は多々あるが、今のところの人生ではトップクラスに嫌いな言葉に堂々のランクインを果たしている。 なぜ嫌いなのか。理由は極めてシンプルだ。 「なんでもいいわけ」がないからである。 例えばこの言葉は「ごはん何にする?」的な話題で特に耳にすることが多いが、なんでもいいと言う人が本当になんでもよかったためしなんてない。少なくともぼくの経験上はない。だい

      • 『こぼしてなんぼのクロワッサン』

        パンを食べる習慣がない。パンに関心がないからだ。 「朝はパン〜」みたいなCMもあったりするが、ぼくは朝食にパンを食べない。というかだいたい昼前に起きるので、そもそもで朝食を食べない。だけどクロワッサンは好きだ。クロワッサンってどうしてあんなに美味しいのだろう。 この文章を書くにあたって考えてみると、どうやらぼくは茶色い食べ物を好きになる傾向にあることがわかった。コロッケだったり、唐揚げだったり、クッキーだったりパッタイだったり(パッタイは茶色とは呼べないものもあるけれど)、

        • 『押せない、やる気スイッチ』

          「なんでもひとつ手に入るとしたら、何が欲しい?」 という質問をされたこと、またはしたことはあるだろうか。 他愛もない会話の王道・『たられば議論』における代名詞的な質問である。 この質問は子どもから老人まで、性別や貴賤を問わずに誰でも話題に参加できる敷居の低さと、「どんなものを選んでもOK」という驚異的な自由度を兼ね備えていて、シンプルでありながらとても力強くて懐が深い。 「変身ベルト」を欲しがる無垢な幼児の愛らしさ。とりあえず考え得る限界数値を言ってみた感が否めない小学生

          『そして、ぼくはおじさんになった』

          いつから人は「おじさん」になるのだろう。 いつまでが少年や青年で、いつからがおじさんやおじいさんなのだろう。 ぼくの中でその定義はまだハッキリとは存在していない。若くとも年老いているように見える人はいるし、年齢を重ねていても10代や20代と同等に、いや、ときとしてはそれ以上に若々しく気力に満ちている人はいる。少なくともぼくはその両方の人と出会ったことがある。 ぼくは今年で30歳になる。 30歳だと考えると、自分がずいぶんといい大人であるように思えるけれど、近年では「人生1

          『そして、ぼくはおじさんになった』

          『何者であるかなんて』

          エッセイが書きたい。 去年の中頃ぐらいから、そんなことを考え始めた。 より厳密に言えば、何かしらの個人的な文章を書いてみたいと思った。 だけどTwitterやブログを始める気にはあんまりなれなくて、そんなわけでひっそりとこの『note』を始めた。 ぼくは普段、映像と音楽を作る仕事をしていて、それはとても小さな規模感ではあるにせよ、なんとか生計を立てて暮らすことができている。 そういった仕事をしていくうえでは企画書や構成、台本などを書くことが多々あって、そういう意味では何かを

          『何者であるかなんて』