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【目指せ中級ハンター!③】


半矢を作らないために

ここでは前述の「実は絶命していなかったパターン」について説明します。

この、鹿が傷ついているが生きている状態のことを半矢と言います。
半矢は結局のところ、致命傷を与えられる場所(バイタル)を一発で打ち抜けないことに起因します。


代表的なバイタル、小脳〜延髄を撃ち抜くと
鹿は確実にその場で崩れ落ちます。



半矢にするくらいなら撃ってはいけない。と教わったこともありますが、上級者でも半矢は作ってしまうものです。
少し当たりどころがずれただけで、鹿はその場を生き抜きます。
ショットガンで撃つスラッグ弾は特に威力が弱く、最近の情勢により銅弾が手に入りにくく、比重の軽い鉄弾を使う事も増えてきました。


鉄弾は貫通力も無いため
鹿の身体の中で止まっている事も多い。
そのためこのように回収できる。



すると尚のこと鹿を一発で仕留めるには正確に、良い距離で、バイタルを撃ち抜く必要があります。
回収の手間が天と地ほど違いますから、とにかく半矢を作らない!これが第一の目標になります。

正確な射撃のために

正確にバイタルを撃ち抜くには依託射撃が基本になります。
要は銃をフリーな状態で持つのではなく、どこかに載せてどっしり構えて撃つという方法です。
猟師さんの中には車の助手席やサンルーフ上に射台を作っている方もいます。
私のような忍び猟(歩いてコッソリ鹿に近付き撃つ方法)がメインの場合、一番安定する委託方法は二脚(バイポッド)です。

※筆者が使っているのはコレ↑
安いモデルガン用の3~10倍くらい値が張りますが、剛性を考えると実銃用を使うべきでしょう。長さ、スイング機能(これは詳しく知りたい方は調べてみて下さい)等を考え、恐らくこの商品がベストです。



三脚という手もありますが、これを野山で持ち歩くのは現実的ではありません。(状況によっては持ち歩くこともあります。)


この3脚だけで2.4㎏あります。

弾を外す理由

草地でバイポッドを用いて撃つ場合、大体が伏せ撃ちになります。
こうすると、地面への委託なのでどっしりと構えられ、鹿のバイタルに照準をビタビタに合わせられます。

ただし、それでも外すことがかなり多くあります。

それが今までなぜなのか、さっぱり分からず、いわゆるイップスのような状態に陥っていました。
10発連続で外して愕然としたこともあります。
これの理由が最近になって分かってきたので、それを初心者の我々で共有しましょう。

➀弾道の中に草が無いように!

草地で伏せ撃ちした場合、バイポッドを据え置くのは当然硬い地面です。
ただしそうすると銃口の前、または弾道中に草が伸びていることがしょっちゅうあります。これがどうやら結構な影響力を持っています。


このように、短く見える草も
銃を置くと意外と高さがあることに気付く



スコープで覗くと草は無いように見えても、銃口はスコープの下にありますから銃弾が草をかすっている可能性は十分にあります。
そうすると50m程度離れた鹿に当たる頃には数センチ~数十センチずれ、結果バイタルを逸れるか、全くかすりもしなくなります。

②撃つときは正しい姿勢で

当たり前のことのように聞こえますが、これは超大切です。
そして意外にも実際のフィールドでは理想的な姿勢で撃てる状況は少ないです。
撃つポジションは鹿達のいる場所に合わせないといけないので、そこが理想的であるとは限らないのです。

そうして無理な体勢で反動の強い12番(一番大きい口径)のサボットスラッグ弾を撃つと、ショットの瞬間銃が大きくブレたり跳ねたりします。
火薬が発火してから弾が銃口を出るまで、ほんの一瞬ですが、このブレの影響は着弾点にてやはり大きく出ます。

しっかり肩当てをし、水平に構えていればこれは最低限に抑えられます。

もし無理な体勢でしか撃てないならば、その時は撃つべきではありません。20mくらいの近距離でない限り、恐らく弾は外れます。

鹿に当てても尚、、、


鹿に弾がガッツリ当たると、

ボスンッッ!!

という着弾音がします。そして鹿がその場でバタンと倒れることもあります。
ここで絶対に徹底して頂きたいのが、鹿が倒れたならすぐに走ってナイフでとどめを刺しに行くと言う事です。

常識的に考えて、きちんと撃って、きちんと当て、きちんと倒れたのが見えたら、もう大丈夫だと思いますよね?
蝦夷鹿の生命力がそんな常識的であれば、半矢を作ることはそうそうないでしょう。

なぜ、こんなにも半矢について長々と語るのか?それは、このような状況においても、目を離したすきに逃げる鹿がいるからなのです。
以前の記事で書いたように、蝦夷鹿の生命力は異常だと考えて下さい。
バタンっと連続で倒した二頭の鹿の両方に逃げられたことすらあります。
倒した後、悠長に車に戻って回収に向かおうなどと考えてはいけません。

倒したなら、その後起き上がる可能性も考えて、とにかくすぐに心臓を刺しに走りましょう。

銃でのとどめはあまりお勧めしません。
背中に一発目を当てて下半身不随にした(と思っていた)鹿に、「一応とどめだ」と思って喉に一発近距離で撃ち、車に戻って回収に向かうと忽然と鹿が消えており、大追跡の末、数百メートル逃げられていたことがあります。


鹿の回収には1時間程度かかった



この鹿に最後のとどめを刺すまでに使った弾は4発です。

このように、弾は意外とバイタルを上手く逸れ、致命傷を与えていない可能性があります。

ナイフで心臓を刺せば、逃げてもせいぜい10mです。
その際最後の抵抗で角、前肢、後ろ脚の蹴り等がぶっ飛んでくることがありますので、そこだけ注意して下さいね。

最後に

このように、逃げる鹿がいることを念頭に置いて狩りに出ても、将来間違いなく半矢で逃げられる鹿が出てきます。
半矢を作らずに経験を重ねたハンターなど聞いたことがありません。
それでも、自分を含む初心者ハンター達がこれから作るであろう半矢の鹿を、一頭でも減らせるように祈っています。

ただ何より、バイタルを確実に撃ち抜けるように、射撃の腕に磨きをかけ、自分のフォームをしっかりと構築することが最優先であることはお忘れなく。


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