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熊に触れる展を終えて

先日6月20日〜23日にかけて、熊(イタズ)に触れる展という展示・販売会を開いた。初めての展示会でお客さんが来てくれるのか不安だったけれど、4日間通して380人くらいのお客さんにご来場いただきました。数字的にも体感的にもすごくたくさんの人に熊の革事業のことを知っていただけて本当に嬉しかった。本当にありがとうございました。

この記事ではそんな「熊に触れる展」で展示したパネルを少し紹介しながら、今回のことを振り返りつつ、次回以降どんな感じになっていきそうか、みたいなことを書いていきたいと思っている。


全体の様子

秋田市のさきがけホールという場所をお借りして展示を行った。場所的に少し行きにくい場所にあるのが玉に瑕だけれど、秋田魁新報社さんの本社ともあって、魁新聞に掲載していただけるのはありがたかった。実際新聞を見てきましたよという方がずいぶんいたし、その人たちにリーチする術を僕は持っていないので、ほんとによかったなあと思う。場所代も比較的安いし、駐車場は広いので、熊の革というコンテンツがどの程度秋田の人たちに刺さるものなのかを知るにはとてもいい場所だったんじゃないかと思う。

設営日を1日設けて、事前に考えていた展示を形にしていった。壁は押しピンなどで穴を開けるのもOKと聞いていて(インパクトなどで大きな穴を開けるのは流石にNG)、どうしようか悩んだけれど、結局両面テープを使って熊の一枚革を宙に浮かせるという展示に。その方が革に負担もかけないで済むし、壁に穴も開けずに済むしいいでしょう、と。

色は9色展開だったので(本当は10色だったのだけど1色だけ製作の段階で外した)、壁に9色の熊革を展示。上を見上げたら個体差による大きさの違いや、色の入り具合、傷跡、ナイフ痕など、想像力を働かせて見れば、いくらでも楽しめるような展示になっていたと思う。実際東京から来た革オタさんは、4時間くらい会場内を動き回り、メモを取り、また動き回るという不審行動をとっていた。最高。
マルシェなどのイベント出店となると、革を10枚も贅沢に壁に貼るなんてことはできないから、ちょっと異質な空間を演出できてよかった。これが毛皮だったらちょっとインパクト強すぎてしんどかったと思うけど革は少しその辺がマイルドになるところもいい。

でも、だからこそいきなり展示には「革は元皮膚」です、というパネルを用意した。

革製品となった名刺入れやらバッグなどを見ても、そこからもともとの動物を想像するのはかなり難しい。特に表面に色がついていたり、加工、塗装が施された革だったら、それはもう工業製品だ。熊の革には「鞣す」という工程以外何も手を加えていないからこそ、もともと皮膚だったんだよ、ということを伝えたくてこのパネルを用意した。皮膚として革を見ると、宙に浮いている熊の革がまた違って見えてくるはず。この会場にいる間に、ものの見え方が変わっていくとおもしろいなあと思っていた。

革も毛皮も自由に触れて自由に纏ってみてほしかった。纏うと不思議な安心感があったり、少し強くなったような気がしてくる。そういうどこからきたのかわからない感覚は大事だと思う。実際、狩りで得た毛皮を纏う行為は儀式的に様々な狩猟採集民が行ってきたこと。毛皮を纏った人間は死の世界である異界と繋がることができた。僕らにはもう認識できない異界を、手に取るように認識していた大昔の人たち。動物の皮というのは人間にとって思っているよりも大事だったのだと思う。その辺のことを太鼓同様もっと掘りたいし、書きたいのだけど、結局書かなかったし、書けなかった。僕が語るにはまだちょっと薄すぎる。

そんな感じで革に触れて、革を感じた人たちに、さらに革の沼に入ってもらいたくて、今目の前にある革がどんなふうに出来上がっていくのかについて、ものすごく簡単ではあるけれどパネルで説明した。その一部をご紹介。

これ、iphoneみたいで好き。


ストーリーが大事。それはよく聞く。でもストーリーって練り上げるものではなく勝手に形作られていくものだと思う。大事と言われると意図して作らないといけない気分になる。

意図とか嘘みたいなものはバレるし、それで下駄を履いても一瞬持ち上げられるかもしれないけど、絶対に続かない。ほんとなんにもならない。僕はこの活動を続けていきたいし、逆にこれはもう無理だと思ったらすぐに辞めたいので、ほんとその下駄を履かないようにだけは気をつけた。

あとはその人がどう感じるか?みたいなことを先に書かない。それも本当に大事なこと。都市伝説じゃないけど、熊の革を纏ってどう思うかはあなた次第だし、この展示会に来てみてどう思うかもあなた次第。僕はあなたの感情には絶対に関与しない。言語化するのがいいことのような風潮がありすぎるので「なんかいい感じですよね」みたいなことがもっと肯定される世の中になりたいよね、と思う。


相棒のGRちゃんが、展示会の前日に壊れてしまって、自分で撮れなかったのがほんっっとに残念なのだけど、妻が残してくれた写真と共に革製品をお届け。


最後に革製品のコーナーがあって、みなさんに現時点でのITAZ LEATHER製品をしっかり見てもらった。値段的に高額な部類の商品が多く、いきなり購入してもらうことは難しいと思っていたので、できれば革製品ができるまでを書いた「授かりものでできている」という自著を買ってもらえたら嬉しいなと思っていた。それによって、また次のイベントに来てくれるかもしれないし、これから出てくる新しい製品にピコンときて買ってくれることになるかもしれない。

でも実際に一番売れたのは熊の革で製作したキーホルダー。みなさん何かお土産にという気持ちで買ってくれたのか、ほんとうにありがたかった。ポーチやポシェットなどの製品を製作したハギレを使って製作した熊革キーホルダー。色も形も全てバラバラで、「ひとかけらも無駄にしない」というコンセプトを職人さんと共有して出来上がったものだ。本もたくさんの方に買っていただけて嬉しかったし、比較的買いやすい価格の熊革製品を用意しておいて本当によかった。

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全ての人に何かが伝わったとは思わない。伝わるというのは簡単なことではない。でも一方で、「マタギ」、「熊」、「革」、「文化」という4単語で、きっと来た人の頭の中には自然と物語が出来上がっていて、その詳細とはなんぞや?みたいなことについて少しは穴埋めになったんじゃないかと思う。だからこそ応援してるよ、って言ってくれる人がたくさんいたのだと思うし、それを聞いて僕はまたこの会を開くぞと思っている。

来てくれたお友達たちが、うちの町でもやろうと言ってくれた。それをちゃんと真に受けて熊に触れる展 in 〇〇を秋田の至る所でやりたいと思っている。いろんなところで開いては、またさまざまな人と出会ってまた次につながっていくようなそんなちょっとした旅みたいな展示会を開いていけたらいいなあ。

という感じで、振り返り終わりです。来てくれたみなさん本当にありがとうございました。あんまり無理してないので、けっこう体力も残っているのもすごくいい感じ。持続性を感じる。ということで、がんばります。

ありがとう!

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