「むすんでひらいて」の謎を解く〈勝手に図書館の本を紹介〉

 会員のW辺です。

 今回紹介する書籍は『むすんでひらいて考-ルソーの夢』(海老沢敏)です。

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 まずこの曲を聞いてください。

 皆さん、たぶん一度は必ずこの「むすんでひらいて」で手遊びしたことがあるのではないでしょうか?

むすんでひらいて
歌:童謡・唱歌
作詞:文部省唱歌
作曲:ROUSSEAU JEAN JACQUES

むすんで ひらいて
てをうって むすんで
またひらいて てをうって
そのてを うえに
むすんで ひらいて
てをうって むすんで

(歌詞検索J-Lyric.netより)

 作曲のところを見てみると、なんと「ROUSSEAU JEAN JACQUES」と書いてあります。あの哲学者のルソーです。どのようにこのメロディーが日本で受容されたのでしょうか?

 最初に伝わったのはプロテスタント讃美歌としての「Greenville (Rousseau's Dream)」。日本語の題名だと「ああ、きみのきみなるエホバの神よ」です。

 これ以降、時代が下るにつれ異名同曲がいくつか作られています。

 まずは、日本初の唱歌集を作成する際に制定された文部省唱歌「見渡せば」。

 そしてその「見渡せば」をもとにして作られた軍歌「戦闘歌」。

 この「讃美歌~唱歌~軍歌」という流れは日本以外の東アジア(中国、韓国)でも同様にみられるそうです(ルソーだけに)。

 この記事は論文でもWikipediaでもないので全ての内容は解説しませんが「ルソーが最初に作曲したものはなんだったのか?」、そして「どのように讃美歌や唱歌、何より「むすんでひらいて」として伝わったのか?」など意外な事実を知ることができる興味深い内容です。

 ちなみに私がこの書籍を知ったきっかけは、別件で日本レコード大賞の企画賞を調べていたとき、2003年受賞のものに「むすんでひらいての謎」というCDがあったためです。

 そこまで高くなかったので(当時)、興味本位で買ってみました。このCDは、この『むすんでひらいて考』に出てくる曲が実際に聞ける内容(再現あり)で、合わせて聞くとより理解が深まると思います。残念ながら広島県内の図書館には所蔵されていませんでしたが、興味のある方は探してみてください。

今回取り上げた書籍(大学図書館へのリンク付き)

『むすんでひらいて考-ルソーの夢』(海老沢敏) 中央図書館自動書庫 760.4/E or 西図書館書庫 767.7/E-15

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