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【あなたの知らない落語の世界】第7回「私が落語家になったきっかけ」

落語家が100回以上聞かれる質問に「どうして落語家になったんですか?」というのがあります。今日は改めてそれを考えてみたいと思います。

きっかけは落語家それぞれ違うので私の場合だと思って聞いて貰えばと思います。

①人前に出るのが好き

根本的に子供の頃から人前に出るのが好きでした。だけど、これは一般的な「人前に出たい」とは違っていて、どちらかというと「人と違うことをして目立ちたい」くらいの感覚でしょうか。

前者の場合だと学級委員になったり生徒会に入ったりという動きになるんでしょうが、私の場合はそういうことには興味がなかったと思います。

もっと自分の近しいコミュティーの中で少し目立っていたという感覚で、友達同士の中で少し気さくなやつという人間だったと思います。

いわゆる「クラスの人気者」とは違いますねw

二番手、三番手で目立つ存在ですかね。

②お笑い芸人への憧れ

目立ちたい性格にはじまって、お笑い芸人のようなものに憧れていたのが中学、高校時代です。

この頃はダウンタウンやウッチャンナンチャンが人気でした。とんねるずも大好きでした。僕の中ではどれが好きっていうより、どれも好きでみんな違うタイプの笑いを生み出していることにいつも憧れを感じていました。

同時にアメリカンホームコメディにもハマっていて、「フルハウス」「愉快なシーバー家」「ボーイミーツワールド」などが大好きでした。

「ボーイミーツワールド」は本当に自分に影響を与えた作品で、大学生になったら英語を喋れるようになって、海外でコメディアンになりたいと本気で思っていました。

そんな思いを抱えながら高校時代を過ごし、まずは東京か大阪に出ないければこの道は開けないだろうと思うようになりました。「お笑い芸人になりたいから東京に行く」なんて、親には言えなかったので、大学を口実にすれば上京が許されるだろうと、高校三年生の一年間はずっと勉強してました。と言っても私の勉強はシンプルで、学校の授業を大事に、塾にはいかず、家で大体4、5時間の勉強。あとは学校の授業中に、自分の勉強をする。

学校の授業での進み具合って遅いんですよね。秋とか冬に終わるように設定されているので、そのスピードでやって行くと、全然ダメなんです。だから、本屋で買った参考書でとりあえず受験に必要な箇所の勉強は一通りやっちゃう。というか何度も繰り返すんです。

で、学校の授業は復習として使う。という感じで捉えていました。私立の中堅〜難関くらいのレベルであれば学校の授業をちゃんとやってれば受かるような気がします。

ただ、不安だったのが塾に行ってないので模試みたいなのを受けないせいで、自分の立ち位置があまりわからないことですね。学校でたまにやる模試が唯一の頼みでした。

そんなこんなでなんとか合格した私立がいくつかありましたが、最終的に学習院大学に決めました。

③落研

「お笑い芸人」「世界のコメディアン」をテーマに高校時代を過ごした私が入ったのが学習院大学。

何かサークルに入るなら、人前に出るものをと思っていました。

そんな私を勧誘して来たのが落研です。

もうここで運命が決まっていたんでしょうね。部室の居心地の良さと、先輩たちの面白さ。今思えば先輩たちだって20歳過ぎの若者ですが、当時は相当なおっさんに見えました。見た目も喋り方も。先輩方すいません。でもそれくらいに落研の先輩は大人に見えましたね。

そしてやっぱり「落語」に触れた時の感覚。部室に転がっていたカセットテープをたくさん聴きました。古い先輩が寄席で隠し録りした音源なんかもありました。(絶対しないでね)

1年生の秋くらいにはなんとなく自分が落語家になるというのは感じていました。

高校時代まで描いていた「お笑い」「コメディアン」はどこに行ったんだと思いますが、見事にどこかへ吹き飛んで「落語」一色になりました。

そして迎えた4年生の卒業公演。私の演目は「らくだ」。みんなに無理言って、時間を作ってもらって1時間弱の長講でした。喋り終えた時に、達成感とワクワク感が押し寄せました。

「これは一生追い求めなきゃ」

そんな思いで落語家になる決意をしました。

当時顧問をされていた柳家小団治師匠に相談をし、正蔵を紹介していただき、一緒に根岸の門をくぐったのが2007年3月15日。私が入門を許された日です。

だから私は他の人のように出待ちをして入門志願をしたという経験がありません。

そして翌る日の3月16日から修行が始まり、見習いとして半年を過ごして、同年の10月1日に前座になりました。

以上、「私が落語家になったきっかけ」でした。

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