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若い頃の眼鏡、年齢を重ねての眼鏡

眼鏡をあつらえた。
仕上がりは2週間後。

 ――年齢を重なることを楽しもう。
そう思うようになってきたこの頃。
ファッションも今の自分が心地よいものを選びたい。そこで数ヶ月前から「大人のいい眼鏡」を作ろうと考えていた。若い頃では考えもしないだろうな。これが大人の遊び。

若い頃は服装や気分に合わせて量販店の安い眼鏡をコロコロ作っていた。多い時は5、6本眼鏡を持っていただろうか。その時はそれで良かった。若さで諸々カバーできたのだ。

私はドライアイの傾向にあるため、コンタクトは滅多につけない。また仕事柄パソコンに向かう時間が長く、コンタクトでは調整が難しかったのもある。

遺伝的に老眼は早めにくるだろうと思っていたけれど、それは40代に唐突にやってきた。近視の眼鏡をかけたままではスマホの画面が見えない。眼鏡を上に外しおでこにかける定番スタイルを披露することに。
まずはじめに、量販店の遠近両用眼鏡にチャレンジした。遠近は慣れが必要で合わない人もいる。使ってみてそれは何となく理解できた。

遠近の眼鏡フレームは、遠近2つの領域が必要なため、やや大きめを選ぶ必要がある。はじめての遠近眼鏡はアラレちゃんのようなデカ眼鏡を選び、レンズ込みで2万円弱で仕上がった。
そんな苦も無く慣れたのだが、気づくとその眼鏡をかけて過ごさないことが多くなった。本当に遠くを見なくてはならない場面まで裸眼でいる。
なぜかけなかったのか?
遠近のレンズに変えても、やはり手元がやや見えにくいのだ。痒いところに手が届いてないもどかしさ。そしてデカいフレーム眼鏡が圧迫感があり嫌いだった。つまり、なんとなく使いにくいのだ。

それでも騙し騙し生活していた。眼鏡がボロボロになってきたが作り替える気分になれない。

しかし、裸眼でも手元が見えにくいポイントが出始めた。暗がりの配線口がぼんやりして全く見えなかなってくる。眼鏡をかけてみても見えない。これには困った。
そして、合っていない眼鏡で無理に見ようとすれば、眼精疲労から頭痛などが出ることも。重い腰を上げて、良い眼鏡を作ることにした。

どこに作りに行こうか。
日本人の顔、鼻の高さに合う眼鏡なら日本製がいいだろうと漠然と考えていた。
少々話を脱線するが、私は万年筆を集めるのが趣味なのだが、外国製の万年筆はアルファベットを、日本製は画数の多いトメハネのある漢字を書くことを視野に入れて作られている。やはりその国の言語が書きやすいペンなのだ。日本製の万年筆の方が断然書きやすい。そう考えると眼鏡も日本製がいいだろう。

そして私は小柄なので全体の骨格が小さく、顔も標準より小さい。標準サイズを多く扱う量販店では、なかなか合うサイズに出会えない。眼鏡サイズはツル内側に数字が書いてある。「レンズの横幅、ブリッジの横幅、テンプルの長さ」の順だ。私はデザインではなく、まずこの数値を見て眼鏡を試着をしている。服と同じサイズの合わないものは使いにくいのだ。 

私は数か月前からネットで眼鏡店を調べ、近場の店舗を覗いていた。
ある平日、ふらりと入ったショッピングモールで「金子眼鏡」を見つけた。眼鏡を探していれば1度は見かける有名店。
正直その日は購入する気はなかった。まだまだ他の眼鏡屋さんも検討したかったからだ。
しかし平日なのもあり、店内に客が私1人しかいない状態だったため、店員さんがマンツーマンでついてくれ、いろいろ試しにかけをさせてくれた。
何点か出してもらい、その一つの眼鏡が驚くほどしっくりした。自分の手持ちの眼鏡をかけ直すのが嫌だと思えるほど楽だった。
これにしようかな。……しかし鏡に映る自分を見て、一瞬手が止まる。
デザインがオシャレすぎる!
いつもの自分が買うであろう眼鏡をかけて鏡を覗くと、安心感はあるも、視界があちらが良いと語りかけてくる。絶対あっち。
……デザインはしばらくすれば見慣れてくるはずだ。
清水の舞台から飛び降りるほどではないが「このフレームで作ってください」と気合を入れてお願いした。フレームの値段を見ると、想定の範囲のお値段だったが、量販店から比べれば数倍。大切に使わないと。

検眼やレンズ選びも丁寧で、取り扱っているレンズについて1つずつ教えてくれた。
レンズメーカー、カールツァイスとニコン。
かけ比べて違いが一目瞭然だった。
カールツァイスはくっきりだが、遠近の堺目がボヤッとする。階段など視界が動いたときなど、慣れるまで時間がかかりそうだ。
ニコンはオールラウンダー。乱視のある私は遠くがブレるが遠近の境目はぼぼ感じられなかった。
カメラも趣味にしているため、各種カメラを所持しているが、メーカーによって強みがあり、仕上がりに色や雰囲気に差がある。
ニコンは淡く、キャノンはビビットなイメージを持っていた。カールツァイスはキャノンのイメージかな。そんな会話をした。
手持ちの一眼レフもニコンだし、乱視で遠くが見えにくいけどニコンしようと思ったが、店員さんから「カールツァイス製レンズ」を強く勧められた。一つ上のモデルのレンズは遠近のぼんやりした差が縮まるとのこと、何よりレンズオーダーがあるため眼鏡フレームと、目の位置を最適に合わせて作れるとのこと。
量販店では、できあいのレンズをフレームに合わせて型抜きするため、黒目の位置と合っていない可能性が高い。

ああ、ここが私の痒いところに手が届かない問題の肝ではないかと感じた。店員さんの説明が思い当たる節が多く、思わず頷いてします。
そうそれ!それが困っていた。
カールツァイス製レンズを選択し、グレードアップしたことで予算を軽々とオーバーした。フレーム同様オーダーレンズがいいと視界が体がこっちがいいと選んでしまったのだ、仕方がない。

私にとって、目と手は保険をかけたいほど大事な商売道具でもあるから、きちんと投資してあげないいけない。壊れてからでは遅いのだから。眼鏡が仕上がるのがいまから楽しみで仕方ない。

日本では女性は若さに重きを置く風潮があるが、私は若い頃に戻りたいとは思わない。いまが一番楽しいのだから。大人は楽しいぞ。

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