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鵠沼鎖線/SasenKugenuma
2023年3月24日 13:49
澱んだ空が晴れる度、僕たちは傘を忘れて帰った。そしてその度に考える。「或いは、最初から持っていなかったとする方が、幾分かマシだったかもしれない」と。四月の空は、誰しもが清々しく前を向いて歩くことを望んでいるようでいて、僕はそれが大嫌いだった。妄執に近いマゾヒズムと、ぐるぐると停滞し澱む思考。罪を犯したことのない者だけが、大きく胸をひらくようにして上段に振りかぶり、湖に石を投げ込む。巻き上げられ