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コンテキスト・デザインは、発信者の意図を読者メリットに転化させる仕事

4月から分身としてジョインしてもらっているスタッフに、クライアントに提出する記事の構成案と、インタビュイーへの取材依頼書づくりに挑戦してもらった。

1本の記事は、戦略(テーマ決め)→ 企画(テーマ×切り口決め×手法決め)→構成(事実集めphase1&話の進め方)→取材(事実集めphase2)→執筆 というざっくりとした制作工程で完成していく。

構成段階の仕事は、記事に入れ込む事実を取材前に集め、ある程度の文章の流れを想定・明文化・共有しておくことで、あとから「これじゃない」とならないようにする布石であり、取材をすでに世に出ている話をなぞるだけのものにしないための下調べである。

仕事をふられたスタッフは、まずは企画のテーマとなっている文言を理解しようとググった。そして、情報の海に溺れたそうだ。そして浮上し、自分が理解した内容を構成案にしたためた。

構成案の前には企画書が存在し、構成案は企画書の内容を肉付けするかたちでできあがっていたので、まるっきり外れたものにはなっていない。

しかし、大切なことが抜けていた。(これは、わたしが事前に、そのリスクを察知して指導をしなかったせいなのだが。)その大切なことというのが、まさにコンテクスト・デザインだった。

これが大学のレポートなら、読者は教授であり、学生は自分が調べて知ったこと・理解したことを整理して書くことで、教授に「よく調べた。ちゃんと理解している」と評価されればそれでいい。教授は学生のレポートを読むのが仕事なので、義務として最初から最後まで読むだろう。

一方、私たちがつくろうとしているのは、彼女が溺れた情報の海、まさにそこへ放り出される運命の1本の記事である。それが、どうすれば少しでも「気づかれ」「読み始めてもらえて」「最後まで読んでもらえて」「何かしらの発見を残す」ことができるか。お金をもらって記事を書くとは、そういう勝負をしているということだ。

タイトルでどう気づいてもらい、最初のリードで何を伝えて興味を掻き立て、どこから話を飲み込みやすく始め、どこに盛り上がりをもってきて、どう締めるか。その全体をどうデザインするかで、読者が記事を読もうとするほどには興味を持っている対象について、読者がもともと持っていたコンテクストを壊したり塗り替えたりして新しくすることができるか(=つまり面白いか)が決まる。

また、ここでデザインするコンテキスト次第で、取材対象者からどんな新しい事実を引き出し受け取り記事に加えられるかも、決まる。

もちろん、記事のテーマを決める戦略や、切り口・手法を決める企画の段階から、コンテキスト・デザインは始まっている。しかし、戦略・企画で発信者側が決めたシンプルな意図を、読み手にとって豊かな文章へと転化させる構成のプロセスにおいて、もっとも真価を発揮しなければならない。

スタッフをうっかり情報の海に溺れさせて初めて、かつて自分自身も情報の海に溺れ、構成しろって言われても何を?どこから?手をつけていいのかわからなかった気持ちをありありと思い出した。2日でひとまず生還し、構成案を書きあげて提出し、なおかつ「ここが大変だった」というメモまで言語化した分身は、大変に優秀である。

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