近況2

26歳。夏。
死のうと思っていた。
金もない、職もない、顔もかわいくない、友達もいない、彼氏もいない、才能もない、努力もできない、面白くもない、そんなやつが生きていても意味がない。
飯を食うのも面倒だ。息をすんのも面倒だ。地獄のような毎日で。ヒロトもそう言ってた。

20歳くらいには死にたかった。
でも、金が貯まって仕事辞めて日本一周の旅に出るまでは生きていようと思った。

23歳の春、公務員を辞めた。
貯金を崩しながら二年くらい日本をフラフラした。

25歳の冬、北海道から浜松に移住し一人暮らしを始めた。
パティシエとラーメン屋のバイトをかけもちしていた。

26歳の初夏、また仕事を辞めた。
今度こそ死のうと思っていたら新潟の友達が一年ぶりに会いにきた。
だいぶやつれた私を見て、8月にまたみんなで集まるからそれまでなんとか生きてろよって言われた。

そして夏。
片手ほどしか行ったことがない小さな本屋の店長から、手伝いに来ないかとラインがきた。
断る理由もなかったので二つ返事で引き受けた。
なんとなく慣れてきたところで、今度は長期的に来れないかと言われた。
断る理由もなかったので二つ返事で引き受けた。のが数日前。

自分なんか生きてる価値がない。誰にも必要とされていない。はずなのに死のうとするとどこからか手が伸びてくる。
だからといって生きるほどの理由にもならないし、飯を食うのも息をすんのも相変わらず面倒だ。

でも最近はこうも思う。
死ぬのも面倒だ。
なんせ怠惰に関してだけは入水自殺マスターのあの男に負けず劣らずほんものなのである。
私の自殺は、またしばらくのびた。



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