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近況1

花はいいよなあ、家賃とかかかんなくて。

5月に仕事を辞めてから、道端の花にも悪態をつきたくなるくらい参ってしまっていた。
大好きなロックを聴くことも、甘いケーキを食べることも、かわいい服を着ることも、春から夏に移り変わる空を見上げることすらもできなくなっていた。
4つ打ちで吐き気がするのなんて初めてだったから、レゲエやダブのゆるいビートに意識を委ねて床に臥す日々を過ごしていた。

希死念慮は一朝一夕で芽生えるものでは決してない。
正確な時期は覚えていないが、二十歳くらいには漠然と死にたい気持ちがあった。
トリガーとなったのは社会人生活のつまらなさによる絶望感だけど、思い返せば元来冷めたガキだった。肉体は真面目に先生の話を聞きながらも、精神はいつも教室の天井を漂っていた。その場の全員を俯瞰して、『究極的に考えたらこんなことなんの意味もないのに、なんで誰一人として疑わずに従っているのだろう』と思っていた。俗にいう中二病である。

こうして職も貯金も気力も無に帰してしまった「こじらせ型中二病」になにができるだろう。寝たきりでもできる娯楽。答えはティンダーである。一度ハマってしまうと歯止めがきかない性格をここぞとばかりに発揮して、ひたすら右に左に指を躍らせていたところ、あっという間に近場の異性が尽き、ついに舞台は国外へ。偶然の一致か運命の合致か、宇宙日本浜松のアナーキーインザ1Kと、宇宙イギリスロンドンのシェアハウスが5Gの電波で繋がってしまったのである。26歳にして初めて時差という概念がインストールされたとき、世界の広さに思わずくしゃみが出そうになった。私が家できりんの夢を見ているとき、カムチャツカの男は朝もやの中でバスを待っているんだなあ。

なんて、谷川俊太郎まるぱくりしてる場合じゃないのは自分が一番よくわかってるよ。
あーあ、白馬に乗った王子様なんて高望みはしないからさ、オープンカーに乗った金髪髭坊主のイケメンがどこか遠くのきれいな海に連れてってくれたらいいのになあ。

令和のシンデレラは鏡も現実も見たくないの。

さ、今日も明るくなってきたね。おやすみなさい。



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