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「自分らしい人生観や生き方」とは?(後編)

ある当事者の「統合」-折り合いがつく

 まずは一般論として、簡単な “言葉合わせ” をやってみましょう。

 たとえば「就職活動する」とか「こんな自分はダメだ」などと口にしている人が「自分を殺して働くのはゴメンだ」と口にするようになったら「自分を殺されない働き方」を一緒に考える、といったぐあいです。

 このように、本人の発言に応じて組み合わせを考えながら、対話していくことが基本です。

 次に、私が知っている当事者の実例です(脚色しています)。

 その人は、何度も転職を繰り返した末にひきこもり状態になりました。「正社員にならなければ」という一心だったのです。
 数年後、ある「ひきこもり当事者活動」を知り、それに参加するようになります。そして、その会のスタッフになることを決めたとき、その活動が可能なスケジュールで働ける職場を見つけて就職しました。今その人は「ずっとこういう働き方をしていきたい」と語っています。

 最後に私の場合です。

私の「統合」-新しい人生観がひらめく

 私は、不登校時代「この高校を卒業したい」という<願い>を持っていたにもかかわらず、どうしても完全復帰にいたりませんでした。ところが、入学4年目の最後(3月)から完全復帰して3年後に卒業したことは、体験談の部分(末尾欄外2番目を参照)でお伝えしたとおりです。

 今から考えると、当時の私は「 “この高校を卒業する” ということにこだわっているから苦しい」という<思い>に気づいていなかったのです。そして「この高校を卒業するしないに関わらず、どう生きていくかが大切なのだ」というふうに<願い>と<思い>が統合され、結果的に「学校に完全復帰したうえで自分の生きたいように生きる」という生き方が生まれたのです。事実、その後の私の高校生活は、クラス活動や生徒会活動に熱中する「普通」とはかけ離れた生活でした。

 ひきこもり状態も「就職したい」という<願い>と、就職につながりにくい「自分の考え方で活動したい」という<思い>が「野生動物のように生きる」という人生観へと統合され、現在の「自分の考え方にもとづく仕事」につながった、と言えるわけです。

 このように<願い>と<思い>が統合されて生まれた<自分らしい生き方や人生観>とは、私のような「こういう生き方をしよう」という新発想だったり「こういう働き方ならできる/受け入れられる」と納得できる折り合いのつけ方だったりします。

 本人が「自分らしい人生観や生き方」を見つけることができるよう、本人の<願い>と<思い>に息長くつきあっていきたいものです。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第233号(2018年12月7日)

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※前回転載した文章の続きです。「<願い>と<思い>をどのようにしたら統合されやすくなり、実際にどう統合されてどう変化するのか」を具体的に提示した文章です。この「自分らしい(自分に合った)生き方や人生観の獲得」が不登校/ひきこもり対応の目標イメージなのですが、いかがお感じになりましたでしょうか。

※このメルマガバックナンバー掲載文、体験談の部分を含め拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載していませんので、ご関心の方は同著を入手してご一読ください。

※この文章でメルマガ『ごかいの部屋』を読みたくなられた方は、こちらの配信サイトのページで読者登録をお願いいたします。今月号では林恭子氏著『ひきこもりの真実』のレビューなどを掲載する予定です。

※来たる2月20日(日)午前、東京都清瀬市で今年初めて不登校講演を行います。清瀬駅至近の会場にZOOMをつないで開催されますので、近隣の方は会場で、全国各地の方はZOOMで、それぞれご参加いただけます。ご関心の方は ↓ の公式ブログ記事をご覧のうえ、末尾にリンクした告知ページをご覧ください。


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丸山康彦
不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。