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対応の目標を変えよう(後編)

親ができることは何か

 ただし「周りが本人にできることは思ったほど多くない」というケースがほとんどであることも事実です。それは、これまで繰り返しお伝えしてきたように、本人の多くは自分の足で自分のペースで歩き通したいと望んでいるからです。

 ただ「そうは言っても親としてできることがあるのでは?」というのが、多くの親御さんの率直なお気持ちでしょう。そこで第二の点です。

 第二に「親としてできること」は、わが子の不登校/ひきこもり状態に直接働きかけることではないということです。

 「わが子の状態が良くなる対応があれば実行したい」とウズウズしていらっしゃる親御さんは、そのお気持ちを「不登校/ひきこもり状態」にではなく「本人を含めた家族生活」に向けていただきたいのです。

 わが子が不登校/ひきこもり状態ですと、親御さんは「学校/社会復帰」を目標に据え、そのための対応だけを考えがちです。
 たとえば「乱れている生活リズムを正す」「ゲームに熱中しているのをやめさせる」「外出するきっかけを与える」等々。

学校/社会復帰の前の段階を

 そうではなく「本人の楽で楽しい生活」と「家族全体の幸せ」のふたつを目標に据え、そのための対応を考えるのです。
 たとえば「心と体の健康に気を配る」「熱中しているゲームの内容や魅力をたずねる」「やりたいことができるよう協力する」等々。
 加えて「(親も)自分のやりたいことをやる」「本人を食事に誘って家族全員で楽しむ」等々。

 本人への対応は、目標が変われば方向性が変わります。「学校/社会復帰」という目標は、本人が自らの意思で掲げたとき初めて実現に向かいます。ですからご家族は、その前の段階を受け持っていると認識して、前述のような方向性で対応をお考えになることです。

 このような対応が「放任」だと思われるでしょうか。逆に、このような対応じたい思いのほか難しく、熟慮と葛藤をともなうものであることを、ほかならぬ親御さんご自身がおわかりなのではないでしょうか。

 したがって、このような方向性の対応を日々積み重ねていくことこそ「親としてできること」「親でなければできないこと」だと、私は考えています。

 次回は、イベントで出た話について考えます。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第216号(2016年2月)

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※ヒューマン・スタジオは民間のため相談業務に利用料がかかります。それでも相談したい、という親御さんがご利用くださるので、皆様とても熱心です。その熱意を傾ける方向を、文中で提案したように「学校/社会復帰」から「本人と家族の幸せ」へ変えることができると、ご本人が変わり始めることが少なくありません。

※このメルマガバックナンバー掲載文、文中でふれた182号の掲載文を含め、拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載していませんので、ご関心の方は同著を入手してご一読ください。

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