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旅は道連れ(前編)

※2002年10月に創刊し、掲載文が200本を超えたメールマガジ(メルマガ)『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本(予定)の掲載文を、毎週1本ずつ転載しています(歳月の経過を踏まえ、字句や一文、一段落など小幅な修正をしている場合があります)。

※今回は、14年前のある研修会での体験を踏まえて、専門家による不登校/ひきこもり対応のあり方を論じた文章を転載します。

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ひきこもり分科会で

 現在、不登校分野とひきこもり分野でそれぞれ2種類ずつ、誰でも参加できる全国研修会が各地持ち回りで開催されており、私もよく参加しているのですが、今年は感染予防のためすべてが中止になりました。

 2006年の8月26~28日、私は出張研修のため関西に滞在しましたが、そのときのメインスケジュールも、不登校の全国研修会「第11回登校拒否・不登校問題全国のつどい(大阪大会)」への参加でした。

 そこで私は、青年のひきこもりを考える分科会で、1日目と2日目とで違うグループに入ったのですが、1日目に入ったグループで考えさせられることがありました。

 そのグループには、関西を代表する不登校の専門家のひとりである、某大学の先生がおられました。そして、参加している親御さん方が、相次いでわが子への対応に関する迷いを語られたことから、話はしだいに「親の本気」「親の覚悟」についての内容になりました。

 そして時間がたつにつれ、その先生をはじめ何人かの参加者が、長引くひきこもりへの対応のあり方として「わが子に自立を迫るか、わが子を一生支えていくかのいずれかを、親は覚悟を決めて選択しよう」と、親御さん方に本気になるよう盛んに助言していました。

親が楽になる進め方とは

 聞いていて私は「親御さんにとって、覚悟を決めるのは難しいこと。だから助言は親御さんを楽にしないだろう」と感じていました。

 もっとも、こういう研修会は1回限りのものですし、時間にも限りがあります。そのような場では、出てきた話題について「こうするべき」という結論を導き出して時間内にまとめる、という進行の仕方になるのは、当然のことでしょう。
 私だって、同じような場である不登校・ひきこもりセミナーや、一方的に発信するメルマガでは、似たようなことをやっているわけですから。

 ただ、あの場では、親御さんに「○○だから覚悟が決まらないんですね」などと、覚悟が決まらない事情や気持ちをみんなで共有し、そのことについて一緒に考える時間を過ごしたほうが、参加していた親御さん方が楽になれたのではないかと思ったのです。

 結論をはっきりと打ち出せば、その話題に該当する参加者への助言にはなります。しかし、そこはあえて結論を出さずに、みんなで「ああでもないこうでもない」と、グダグダ語り合ううちに終わってもよかったのではなかったか、というわけです。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。