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本人たちが人権を主張する意味(前編)

※一昨年度と昨年度の2年間、2002年10月に創刊したメールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文を転載してきました(字句や一文など小幅な修正をしている場合があります)。

※昨年度の最後にお伝えしたように、今年度からはメールマガジン(メルマガ)にかぎらず過去に書いた文章を毎月1本転載していきますが、時系列にすることによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう書き進めていきたいと考えていました。

※ただ、今月は転載する予定だった20年余り前の文章が見つからないため、予定を変更して明後日開催する年次イベント「不登校・ひきこもりセミナー2022」の第1部で私が行う講演で紹介する、メルマガ第259号に掲載した文章を転載します。「2年以上経った文章を転載する」という方針を早くも違(たが)えるうえ、よりによって今年3月に配信したメルマガに掲載した、すなわち最新の文章を転載することになりましたが、前記イベントの “予習” にもなりますのでご了承ください。

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ふたつの人権宣言に込められた思い

 2021年度(今年度)が終わろうとしています。
 今年度の不登校・ひきこもり分野では、昨年度に引き続いて新型コロナ禍のなか、官民双方にさまざまな動きがありました。

 そのなかで私は、前回の本欄でもご紹介した「ひきこもり人権宣言」の作成に参加し、条文内容の提案やメンバーによる寄稿文の作成、発表記者会見への出席といった活動をしてきました。現在も講演や研修会の内容に盛り込むなど、普及に努めています。

 人権宣言は不登校分野でも13年前に発表されています。「不登校の子どもの権利宣言」です。それが「ひきこもり人権宣言」を構想する動機のひとつだったと、共同世話人のひとりが語っています。

 この不登校・ひきこもり両方の当事者経験者による権利の主張を図々しく感じる方もおられるでしょうが、内容を見れば「自分たちへの見方や接し方」についての真っ当な要望であり、不登校/ひきこもり対応の基本原則に位置づけられるものだと私には思えます。
 と言うのも、見方として「同じ人として見てほしい」と、接し方として「配慮してほしい」と、私が常々お伝えしているふたつにまとめられる本人たちの願いが込められていると感じられるのです。

ふたつの人権宣言を読む

 そこで、それぞれの条文のなかから、共通している内容をいくつか取り上げます(不登校の子どもの権利宣言=「不登校宣言」/ひきこもり人権宣言=「ひき宣言」と略)。

1.対応・支援の目標
*「学校復帰」ではなくいろいろな学び・育ちのあり方を選ぶ権利(不登校宣言3条)
*「社会復帰/就労」ではなく「リカバリー」(ひき宣言2条・3条)

 共通しているのは、目標が「学校/社会復帰」ありきではなく「復帰を含めて本人が自分の意思で選択できるように」「本人が自分のペースで生きていけるように」という配慮が必要だという点です。
 言い換えれば、目標は自分で決めるものであって他者が強制するものではない、ということです。
 ちなみに「リカバリー」というのは、メルマガ225号にも書いたように「自分らしい生活を自己選択し、自分なりの人生を歩んでいくこと」という意味で、それができるようになることが目標になりえます。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。