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会話を深めることから(前編)

※2002年10月に創刊し、掲載文が200本を超えたメールマガジ(メルマガ)『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本(予定)の掲載文を、毎週1本ずつ転載しています(歳月の経過を踏まえ、字句や一文、一段落など小幅な修正をしている場合があります)。

※今月の前半は、先々月の最終週から毎号続けている転載をさらに続けます。きょうは、創刊10周年記念号を挟んで9年前の12月に配信した第197号の掲載文です。

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会話できる状態にない親御さんへ

 前回転載した196号の掲載文で私は「教育意識」や「支援思考」にもとづく対応や言葉=支援の言葉と「生活意識」や「生活思考」にもとづく対応や言葉=日常の言葉を、具体例を挙げて対比させ「どちらの意識・思考が家族全員に幸せ感を抱かせるか」と問いかけました。

 ただその具体例のひとつ目の“経済的見通しに関する家族会議”について補足したように、何事もそれまでの親子間のコミュニケーションのありようや今の本人の状態によってはリスクがあります。まして「そもそも会話できる状態にない」「どうやったら“お金の話”ができるようになるのか?」などといった状況にある親御さんは、そもそもどうコミュニケーションすればよいのかわからない、とお迷いのことでしょう。

 そこで今回は、そんな親御さんがわが子とのコミュニケーションをどう積み重ねていけばよいかを提案したいと思います。

 私は、親子間のコミュニケーションには三つのレベルがあると考えています。

日常会話と深い話と本題の話

 ひとつ目は「日常会話」。挨拶からおしゃべり、そして用件の話など、どこの家庭でも当たり前に行われているレベルの会話です。
 用件とは「洗濯するから自分の服を出しといて」「きょうの夕食は何が食べたい?」「一緒に○○に行かない?」などといった会話です。

 ふたつ目は「深い話」。テレビのドキュメンタリー番組を一緒に観ながら社会について語り合ったり、人生やお子さんの将来について語り合ったり、親御さんが人生経験を語ったり、お子さんが自分の気持ちを打ち明けたり、などといったレベルの会話です。

 三つ目は「本題」とか「核心」とか呼ぶべきもので、話すときに緊張感が走るような難しいレベルの話です。たとえば、いじめ――最近社会問題になりましたが――の当事者にお子さんがなっている、お父さんの会社が倒産した、など対応の仕方しだいで家族の人生が大きく変わるような話です。

 当メルマガがテーマにしている「不登校/ひきこもり状態」について言え
ば「どうすれば学校/社会に復帰できるか」とか「学校/社会に出られない現状をどう考え、どう生きていくか」などの話は、三つ目の「本題」「核心」というレベルの話に該当します。

 前回で例に挙げた話ですと“ひきこもっている本人への養える期限の通告”は三つ目のレベルですが“経済的見通しに関する家族会議”はふたつ目と三つ目の間に位置するレベルだと考えられます。

 さて、この分類で言いますと、親御さんの多くはわが子が不登校/ひきこもり状態になってからしばらくの間、三つ目の「本題」「核心」の話ばかりして、日常会話から何からごっちゃに話しているうち、コミュニケーションがギクシャクするようになったり、本人が口をきいてくれなくなったりしていないでしょうか。

 そういう場合は、上に示した三つのレベルの話を、あらためてひとつ目から順に定着させていくコミュニケーション方法がお勧めです。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。