見出し画像

「待つ」とは特別なことをしないこと

 今回と次回は、不登校/ひきこもり状態への対応についての、基本的な考え方について提案します。
 私が、自分で経験してきたことやほかのさまざまなケースを見聞してきたことから言えるのは、不登校/ひきこもり状態への対応で最も大切なことは「自然さ」ということです。
 なぜなら、不登校/ひきこもり状態の人たちの多くには「自然に生きられない」「無理して生きてきた」という感覚があるからです。つまり自然で無理のない生き方や人間関係を求めている本人に、不自然で無理のある対応をしても逆効果になることが多いのは当然なのです。

               ●

 不登校/ひきこもり状態への対応として、通り一遍に「待つ」ということが強調され、それを頭で理解した親御さんが、無理に本人への関わりを断って放っておいてしまう、という話を聞いたことがあります。

 しかし、これはいかにも不自然です。親子・家族なら、当然日常的なコミュニケーション・関わりというものがそれぞれあるはずで、そのスタイルを変えてまで本人から手を引いてしまっては、もはや家族としての接し方ではありません。

 不登校/ひきこもり状態への対応で最も重要なことは「特別な対応をしない」ということです。「学校に行って/仕事してないお前に何々する権利はない」と抑圧したり「登校したら何々してあげる」と交換条件を出したり、だまして病院に入院させたり、などといった技術的あるいは策略的な“特別指導”をしない、ということです。

 「待つ」というのは、特別な対応、つまりわざと本人への関わりを断ったり特別扱いしたりすることではなく、それまでどおりの本人との関わり、つまりそれまでどおりの家族関係を続け、そのなかでのコミュニケーションを積み重ねながら、本人がエネルギーを蓄えるのを待つ、ということなのです。

 私は、相談場面や親の会などで、対応策について質問されたとき、まずはこう答えるようにしています。「特別なことをしようと考えるな」
 親御さんや周囲の方々にそのことに気づいてほしいから、私は相談員をやっている、とさえ言えます。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第29号(2003年5月7日)

====================

※2002年10月に創刊し、掲載文が200本を超えたメールマガジン 『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本(予定)の掲載文を、毎週1本ずつ転載していきます(字句や一文など小幅な修正をしている場合があります)。
※拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本は一部を除き転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。

※この記事をお読みになってメルマガ『ごかいの部屋』を読みたくなられた方は、こちらの配信サイトのページで読者登録をお願いいたします。



不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。