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相談機関と直接支援団体(前編)

※2002年10月に創刊し、掲載文が200本を超えたメールマガジ(メルマガ)『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本(予定)の掲載文を、毎週1本ずつ転載しています(字句や一文、一段落など小幅な修正をしている場合があります)。

※今回は、前回転載した文章に関連して、私個人が家庭訪問“積極派”だと認識している団体の方を招いて開催したイベントでのやりとりから、不登校/ひきこもり状態への支援の目的や目標設定のあり方の違いについて、13年前に書いて掲載した文章を転載します。

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どれくらい自立しているの?

 前回転載した13年前の6月に書いた文章で私は、ヒューマン・スタジオ(私が運営している不登校・ひきこもり相談室)主催「青少年支援セミナー2007春夏」のテーマにちなんで、ひきこもり状態にある人への家庭訪問について、実施団体の間に「強硬派」「積極派」「慎重派」という考え方の違いがあることをお話しました。

 それから間もなく開催したセミナーで、当スタジオと「コロンブスアカデミー」がプレゼンテーションしたあとの質疑応答のなかで、両団体の間で一問一答を行った際、次のようなやりとりがありました。
 それは、コロンブスアカデミーのプレゼンターの方が「スタジオが支援したひきこもり本人はどれくらい自立しているのか?」と「援助実績」を私に問いかけたのです。

 それに対して私が「コロンブスアカデミーより歴史も浅いし規模も小さい(つまり利用者数が少ない)」ことを理由に、自立した人が少ないと答えたところ、それを受けてコーディネーターの中西拓子氏(「ポレポレ・ちがさき」代表=当時)が「両団体は役割が違う」と指摘されました。
 私は「しまった、そう説明すべきだった・・・」と悔やみました。

閉じこもっている段階を担当する相談機関

 というのも、スタジオのような相談機関の役割は「“悩み苦しみ”の軽減」にあります。そのため、通常は元気になる前の、自宅や自室に閉じこもっている段階の本人に関わることになります。当然、自立うんぬん以前に「心理状態の安定化」や「エネルギーの回復」に専念しなければなりませんから、支援方法は「親面接」が中心になります。

 それに対して、コロンブスアカデミーのようにフリースペースや就労支援プログラムなど、ひきこもり本人を集めて直接支援する方法を揃えている団体(以下「直接支援団体」と呼びます)は、そういう場に通えるようになった段階の本人に関わるわけですから「自立支援」の役割を担うことに何の不思議もありません。

 相談機関と直接支援団体のもうひとつの違いは「利用の仕方」にあります。すなわち相談機関の利用は、1回だけ相談する、定期的に通う、不定期に通う、などさまざまですし、中断や終了も本人や親御さんの判断に任されます。それに対して直接支援団体の自立支援プログラムは、多くの場合本人が自立するまで通うことを目標に企画されています。

 要するに、相談機関と直接支援団体では、主として関わる本人の「段階」や、本人または親御さんの「利用の仕方」が違うわけですから、相談機関は自立する青年の比率や人数が少なくて当然なのです。

 もっとも、直接支援団体はほとんどが相談部門を設置していますから、閉じこもっている段階から直接支援団体だけを利用して自立へと進んでいく人は少なくありません。ただ、直接支援団体を利用しないで自立へと進んでいく人もいることは、認識しておくべきでしょう。

 以上、両団体の役割の違いについて述べましたが、両団体はもちろん考え方にも違いがあります。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。