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身の丈に合った自分へ(後編)

“人生の全盛時代”は再来する

 では、ほかの不登校/ひきこもり状態にある人たちもそうなるのかと言えば「丸山の事例は特殊で、自分/わが子はそうならない」と悲観しておられる本人や親御さんが少なくないでしょう。
 確かに、私は経済的にも高校にも人にも恵まれていて、運が良かったのは事実ですが、私の “大化け” を自分含め誰ひとりとして想像つかないほどひどい状態だったのも、また事実なのです。

 では、私のようではない人はどうなるのでしょうか。

 まず、お子さんの過去を振り返って「あのときは良かった」「あの時代は頑張っていた」とおっしゃる親御さんが少なくありません。
 「クラスメートに頼りにされていた」「部活の厳しい練習についていっていた」「一所懸命勉強して偏差値の高い大学に入学した」など、人それぞれです。

 私はこれを “人生の全盛時代” と呼んでいます。

 確かに、当時発揮していたエネルギーは今の本人にはありません。ただ、それだけのエネルギーを発揮できる人=ポテンシャル(潜在力)がある人だという事実は、そういう時代があったことが証明しています。

 そこで私は、過去に “人生の全盛時代” があった場合は、それだけのエネルギーを再び発揮するときがやってくる可能性を信じるよう、親御さんにお話ししています。

可能性を探り続ける

 次に “人生の全盛時代” の有無にかかわらず、得意なことや好きなことがあり、かつてやっていた/今もやっている場合は、それを大切にしていただきたいと思います。

 勉強、読書、音楽、写真、イラスト、筋トレ、ゲーム、ファッション、得意分野の評論、・・・等々、趣味としてやっていたことが仕事や何らかの活動で役立ったり、ライフワークになって生きがいにつながったりする人は少なくありません。

 ほかにも、私は最近「カウンセリングなど対人援助の仕事に向いている」と思われる人にときどき出会っています。
 不登校/ひきこもり状態の人は、自らが人に理解されにくい悩み苦しみを経験しているため、同じような悩み苦しみを持っている人へのキャバシティ(許容範囲)が広いですし、感受性が鋭く自他の心理のあやを見抜くことができる人も少なくないので、当然と言えば当然です。

 このように、得意な/好きなことがある人や才能を感じさせる人の親御さんには、私はあえて「不登校/ひきこもり状態のあとは、こういう人になるかもしれませんね」とか「将来が楽しみです」などと大胆予測してみせます。

 もちろん、ここに書いたことは「可能性」にとどまります。なぜなら、本人の可能性を生かすも殺すも、受け入れる側の学校や社会の意識改革や仕組みづくりのいかんにかかっているのですから。

 ご家族など周囲の人や私のような相談員にできるのは「可能性を探ること」に尽きると言っても過言ではありません。

 将来を悲観するよりも、明るい可能性を探ることを続けていきたいものです。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第234号(2019年2月27日)

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※前回転載した文章の続きです。久しぶりに自分の体験を詳しく紹介しながら「<願い>と<思い>が統合され “身の丈に合った自分” になれたら、それ以上の自分になれる」ことと、援助経験を紹介しながら「本人の力が発揮されるようになる環境と可能性を追い求める」ことを訴えました。

※このメルマガバックナンバー掲載文、体験談の部分を含め拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載していませんので、ご関心の方は同著を入手してご一読ください。

※この文章でメルマガ『ごかいの部屋』を読みたくなられた方は、こちらの配信サイトのページで読者登録をお願いいたします。今月号はこの文章のような記事はありませんが、林恭子氏著『ひきこもりの真実』のレビューなどを掲載して近日配信予定です。

※今度の日曜日、2月20日は前回お知らせした清瀬市での不登校講演に続き、午後に横浜市で「ひきこもり人権宣言」をテーマに講演することになりました。ただしひきこもり家族会の月例会ですので、参加対象は「神奈川県在住で家族会に入会を検討できるご家族」が原則です。該当する方は ↓ の公式ブログ記事をご覧のうえ、よろしければご参加ください(午前の清瀬市での講演情報は前回のこの箇所をご覧ください)。



不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。