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「対応」とは自分で判断してやること

 「相談員に“そっとしておけ”と言われたから、そのとおりにそっとしておいた」「親戚に“対決すべきだ”と言われたから、そうしなければならないかなと思っている」などとおっしゃる親御さんがいます。
 しかし、これはいかにも不自然です。本人への対応は、日々本人と接している親御さんがご自身で判断すべき、家族生活・子育ての一場面であるはずで「誰々に言われたからそう対応する」というのでは、もはや家族としての接し方ではありません。

 人に相談するというのは、その人の指示を仰ぐということではありません。その人の意見や提案を判断材料に加えるということです。

 たとえば、わが子が不登校やひきこもりの状態でも、親子関係はそれなりに平穏さを保っているケースがよくあります。ところが、相談員の指示どおりにわが子に対応し始めたとたんに、親子関係がうまくいかなくなって、わが子の状態が悪くなることがあるのです。

 わが子に対して、専門家の原則論(教科書)どおりに対応する場合、親御さんは「こう対応すればいい」という納得を得るプロセスのないまま対応することになります。まして、その対応が親御さんの個性に合わないものであれば、親御さんが辛くなって、対応を続けることができなくなることもあります。

 反対に、親御さんご自身が判断して対応する場合、親御さんが「こう対応すればいい」という納得を得るプロセスを経て対応することになりますから、その対応は親御さんの個性に合ったものであることが多く、かりに個性に合わないものであっても、親御さんはその辛さにじゅうぶん耐えることができ、対応を続けることができます。
 どちらがうまくいきやすいか、明らかだと思います。

 私が相談を受けていて、親御さんから「自分でわが子との接し方を考え、自分の判断でこう変えた」と報告されることがよくあります。
 日々わが子と接するなかで、悩み葛藤しながらもご自身で考え判断していこうとする親御さんのひたむきな姿勢にふれると、私は感動と尊敬の念を覚えます。

 親御さんや周囲の方々にそういう姿勢になってもらうために、私は相談員をやっている、とさえ言えます。


初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第31号(2003年5月21日)

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