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ひきこもり生活を楽に!楽しく!(後編)

困りごとを解決する

 まず「歯医者に行けない」「床屋(美容院)に行けない」ということですが、その理由は「ほかの患者/客に会いたくない」と「話しかけられるのが怖い」で多数を占めるようです。確かに「きょうは(仕事/学校が)お休みですか?」などと話しかけられたら、本人は何と答えたらよいかわかりません。

 そこで、ほかの患者/客に会いたくない人向けの方策として「訪問診療」「訪問理美容」が考えられます。前者は保険がきかないなど制度上の壁がありますが、後者はプロでなくても得意な人に切りに来てもらったという実例もあります(去年8月25日に転載した204号の掲載文参照)。

 また、話しかけられるのが怖い人向けの方策として、医院や理美容室を対象に“ひきこもり講習”を開講し、修了した医院や理美容室に検索サイト上で「受講済」のアイコンを付ける、ということが考えられます。

ゲームを楽しめるようにする

 次に「寝食を忘れてゲームに熱中している」ですが、これについては「楽しんでやっているんじゃないんだ」と本人に訴えられたという親御さんのお話をよく聞きますし、理解ある関係者も「辛いからゲームにのめり込むのだ」などと、ゲームに熱中する心理を解説したりします。

 確かに「ゲームに熱中せざるを得ないほど苦しんでいる」という本人の心理への理解は、今後も広めていかなければなりません。

 そのうえで「楽しくないのにゲームに熱中している状態」から「ゲームを楽しむことができる状態」へ進展すれば、本人は生活が楽しくなり「ほかにも楽しいことはないか?」と意欲が出てくると思います。

 そのためには、ゲームをやらない訪問支援員などではなく、ゲームが得意な人とつながれる仕組みを作り、一緒に楽しめるようにすればよいのではないでしょうか。

 本来、ゲームは楽しむためにやるもの。それなのにそうではない動機でやり続けることは、本人にとって苦痛以外の何物でもなく「またきょうもゲームだけで1日が終わってしまった・・・」と落ち込む日々を繰り返している人も少なくないことでしょう。

生活を楽に楽しくする

 私は、不登校/ひきこもり状態の人の課題のひとつは「楽しむことを思い出す」だと考えています。7月7日に転載した201号の掲載文でお話ししたように、学校/社会に出られなくなったことによって、それまでやっていた趣味をやめてしまう人は少なくありません。不登校/ひきこもり状態というのは、それほどまでに本人からエネルギーを奪ってしまうものなのです。

 したがって、本人が趣味を再開したり、新たにやりたくなったけどひとりでは難しいことを実行したりするためには、それらを極力少ないエネルギーで実現できるようにする方策が求められます。

 たとえば、ゲームにかぎらず趣味を持っている人には、同好の人を見つけて一緒に楽しめるように、やりたいことがあるけど実行できないでいる人には、それを教えたり一緒にやったりする人を見つけられるように、それぞれの目的に合った人を揃えてマッチングするような仕組みを構築したらよいのではないでしょうか。

 このような支援システムによって、本人の現在の生活が楽になったり楽しくなったりして、心に潤いとゆとりが生まれれば、エネルギーの回復も早まることでしょう。

 以上は、私の構想の一部でありたたき台です。これをもとに、困りごとや解決策のアイデアなどがおありになる方はぜひお寄せください。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第212号(2015年6月10日)

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※タイトルを見てギョッとした方がいらっしゃると思います。でも、私は不登校・ひきこもり相談でこの点の実現を最も重要視しています。前回の文章ではその理念と家族の対応法を、今回の文章では関係機関に取り組んでほしい支援法を、それぞれ提唱しています。

※このメルマガバックナンバー掲載文、拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。

※この記事をお読みになってメルマガ『ごかいの部屋』を読みたくなられた方は、こちらの配信サイトのページで読者登録をお願いいたします。今月号はこのような文章ではなく、先日開催した「ヒューマン・スタジオ設立20周年記念イベント」の報告記事を掲載します。

※来たる16日(土)、東京都日野市で開催されるひきこもりセミナーで講演とパネルトークのコーディネートを行います。日野市の方は、私が書いた↓の公式ブログ記事をご一読のうえ、ご参加またはご紹介をお願いいたします(市外の方はお問い合わせください)。


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