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「報・連・相」から始めよう(後編)

本人の反応より大切なこと

 このように「報・連・相」を軸にすると話しかけることが出てくる/増えるのではないでしょうか。もちろん、それでも本人の反応が思わしくないことも多々あるでしょう。

 その場合は「沈黙したか不穏な態度を見せたか」などそのときの雰囲気によって、その種の話をまたするかどうか判断なさることです。

 重要なことは、わが子が良い反応を示すことではなく、親がわが子の不登校/ひきこもりに関係なく家族としての必要と関心に応じて、虚心坦懐にわが子に話したりたずねたりしているのだ、ということを表現し続けること、すなわち親の一貫した姿勢なのです。

 また「自室に閉じこもったままで話ができない」という状況であっても「報告」と「連絡」なら、扉越しにでも筆談ででもできます。本人の状態にもよりますが、可能な範囲でやってみる価値はあると思います。

「そこにとどまる会話」こそ

 次に後者の、本人が元気になって深い話もできるようになってから、しばらく経過している場合です。

 この段階に至ると、本人が話すことのなかに「学校/仕事」や「進路/生き方」への関心や意欲がうかがわれる内容が入ってくるときがいずれやってきます。たとえば、学校のことで「もうすぐ文化祭だな」とか、アルバイト募集の告知を見て「こういう仕事ならできるかな」とか、そんな現実的な話題を口にするわけです。

 ただ、深い話と本題とは往々にして区別がつきにくいものです。不登校のわが子が学校の話題を出したり、ひきこもっているわが子が仕事の話題を出したりすると、親御さんは「じゃあ行ってみたら?」「じゃあ応募してみたら?」などと、実行に移すように勧めがちです。

 が、本人としては、関心が学校/社会に向いてきただけで、行動ではなく思索の段階での発言、または自分自身ではなく一般論としての発言であることがしばしばです。したがって、そういう発言が出たときは、――前号の「社会批判するわが子」のところでもお話ししたように――、親御さんはその先に話を進める(本題に持っていく)のではなく、その発言をテーマに語り合う(その話で盛り上がる)ことが大切です。

 言い換えれば「先を急ぐ」のではなく「そこにとどまる」ということです。そして「その話」の積み重ねが基盤となって、その上に「その先の話」が乗ってくるわけです。

 逆に言えば「その話」で盛り上がる経験なしに「その先の話」は出てこない、と心得ておかれることが大切です。

 前号からコミュニケーションの進め方とコツの一端をお話ししてきました。わが子とのコミュニケーションにお困りの親御さん、今年は“コミュニケーション回復元年”といきたいものですね。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第198号(2013年2月13日)

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※前回転載した文章の内容をさらに詳しく説明し、親御さんへ具体的に提案をしている文章です。参考になるところがありましたら幸いです。

※講演では時間的にここまで説明できないこともありますが、前回と今回の文章を転載するにあたり8年ぶりに読んで、講演でしている説明より上手に書いてあることに気づき、これからはこのふたつの文章に立ち返って説明しなければ、と反省しました。

※このメルマガバックナンバー掲載文、拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。

※この記事をお読みになってメルマガ『ごかいの部屋』を読みたくなられた方は、こちらの配信サイトのページで読者登録をお願いいたします。今月は転載しているような文章の掲載月ですのでお楽しみに。

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