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結果よりプロセス(後編)

結果ありきへの疑問

 それでは、本人の多くが求めている「幸せ」とは何でしょうか。

 私は「結果よりプロセス」だと考えています。

 ここで言う「結果」とは、前述のとおり一般には「学校/社会復帰」を指します。
 それに対してここで言う「プロセス」とは、結果で区切られずに過去から未来へ向かって続く「過程」を指します。

 当然のことながら本人の人生は、学校/社会に戻ってからも延々と続きます。つまり、本人にとって「学校/社会復帰」という結果は、ゴールでも何でもなく人生の通過点にすぎません。したがって「それまでの過程」と「それからの過程」の両方が自分の納得できるものになって、初めて幸せを感じることができるのではないでしょうか。

 実際、本人の話を聴いていると「自分を殺して学校/社会復帰しなければならないのか?」などといった「学校/社会復帰」という結果ありきの考え方を疑問視する発言が珍しくありません。

 当然のことながら、本人は「幸せになりたい」し、親御さんは「本人を幸せにしたい」わけですが、どうやら本人と親御さんをはじめ周囲の人々との間では「幸福観」つまり「幸せになる道筋」が違うようです。

過程に幸せを感じる

 もともと身体や精神の障碍の分野で行われていて、近年ひきこもり分野からも注目されている「ピアサポート」という活動があります。

 私は現在「ひきこもり当事者グループ「ひき桜」in横浜」が助成金を得て5年前から4年間開催したあと今年度は自主開催している連続学習会「ひきこもりピアサポートゼミナール」のスタッフをやっています。

 同グループ代表の割田大悟氏によると「当事者どうしの支え合い」を意味する「ピアサポート」がめざす目標は「世間的な社会復帰」といった「結果」ではなく「生活の質の向上」と「リカバリー」です。そして「リカバリー」とは「自分らしい生活を自己選択し、自分なりの人生を歩んでいくこと」と定義されています(「ヒュースタゼミナール」第3回での割田氏の発表)。ここでも「結果」ではなく「プロセス」が重視されています。

 そして、この活動が前述の分野で効果を上げていることからも、人は「歩み」そのものに幸せを感じることがあるのだと気づかされます。

 今このときも本人は人生を歩んでいます。その一瞬一瞬に幸せを感じるにはどうすればよいか、この夏お子さんと考えてみませんか。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第225号(2017年8月25日)

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※ちょうど4年前に書いたこの文章、世間一般はもとより多くの家族や関係者が信じ込んでいる“不登校・ひきこもり観”や“幸福観”を覆す、メルマガ掲載文のなかで最も本質的な論考のひとつであり、私が相談業務を始めた18年前から実践の基礎に据えている考え方をまとめた1本です。

※その論旨は、10数年前からメールマガジン(メルマガ)の案内チラシに記している「復帰への支援と幸せへの支援はどう違う?」というキャッチコピーや、私がやっている不登校・ひきこもり相談室「ヒューマン・スタジオ」の案内書に記している「プロセス重視の不登校・ひきこもり相談」という文言に凝縮されています。

※このメルマガバックナンバー掲載文『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。

※この記事をお読みになってメルマガ『ごかいの部屋』を読みたくなられた方は、こちらの配信サイトのページで読者登録をお願いいたします。多忙のため先月号の配信は今月にずれ込んでしまいましたが、今月号は20日に配信予定です。


不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。