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〔経験者は同じことを言う①〕適応力より自律力(前編)

※2002年10月に創刊し、掲載文が200本を超えたメールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本(予定)の掲載文を、毎週1本ずつ転載しています(字句や一文など小幅な修正をしている場合があります)。

※筆者である私が10年以上前から書いたり話したりしていることと、同じことを書いたり話したりしている元当事者がいます。引用したと明示しない場合もありますが、多くは偶然です。そこで今月は、そういう部分が含まれている掲載文を転載していきます。お読みになって「この部分はあの人が話して/書いていたことと同じだ!」とお気づきになる方がいらっしゃるかもしれません。

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自信がついたはずなのに

 不登校/ひきこもり状態の人を持つ親御さんのお話をうかがっていると、学校/社会に出られなくても、塾やお稽古事の教室、単発のボランティアなどに出かけることや、友だちと遊ぶことができる――本来適応すべきとされている以外の場なら参加できる――人が少なくない、という印象を受けます。

 言い換えれば「自分で選んだ場に参加している」というわけです。
 そういう本人に対して、親御さんをはじめ周囲の人々は「そういう力があるのに学校/社会に適応できないのは、逃げているから」とか「そういうことしかできない(自分の好きな場にしか参加できない)わがままな連中」などと、本人たちのことを評価します。

 本人たちは、自分で選んだ場に参加しているのに、なぜ学校/社会に適応
できないのでしょうか。

 私が不登校状態だった高校2年目(2回目の1年生)の夏休みのことです。
 父の知り合いから「自分の兄夫婦が子どもキャンプをやるので、ボランティアで手伝わないか」という誘いを受けました。
 前半の3日間は奥様が主催する「子ども会」のキャンプ、後半の4日間は旦那様が自営している子ども支援団体主催のキャンプ、ということでした。

 学校にはときどき行くが、それ以外には外出できない私も「夏休みなら大丈夫だし、面白そうだ」と思って参加することにしました。

 どちらのキャンプも、中学生から大学生までのボランティア数人が参加した小学生をサポートする、というシステムです。私は、かわいい子どもたちと共に過ごした楽しい時間が素晴らしい思い出になっただけでなく、ほかのボランティアと同等に扱われ、与えられた役割を果たしたことで自信がつきました。

 そのため私は「夏休み明けの2学期からは学校に完全復帰できるぞ」と確信しました。
 ところが、夏休みが終わって2学期が始まっても、私は夏休み前と同じようにときどき登校することしかできませんでした。

 夏休み中にキャンプでのボランティア活動ができたことは、学校への完全復帰とは関係なかったのです。

 そこで、学校/社会に適応することと、自分で選んだ場に参加することの違いを考えてみましょう。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。