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家庭訪問からひきこもり支援を考える(前編)

※2002年10月に創刊し、掲載文が200本を超えたメールマガジ(メルマガ)『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本(予定)の掲載文を、毎週1本ずつ転載しています(字句や一文、一段落など小幅な修正をしている場合があります)。

※突然の家庭訪問によるひきこもり本人への強引な説得または連行、支援内容に見合わない高額請求など、悪質支援業者が問題になっています。しかしこういった自称支援および医療は、不登校本人へのそれを含めれば半世紀近く前から行われ、しばしば問題になってきました。そこで今回は、13年前に書いて掲載した文章を転載します。

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支援を届かせる手段として

 拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録したメルマガ第141号の掲載文「不登校やひきこもりになると」で私は、不登校/ひきこもり状態にある人たちの多くに共通する心理のひとつとして「自宅でも気が休まることなく、頭の中では常に「登校すべきだ」「社会参加すべきだ」という規範意識と、そうできない自分自身への罪悪感で、日々傷を深め疲れを増している、と述べました。

 ということは「不登校/ひきこもり状態が長引くほど、心の傷が深まった
り心の疲れが増したりしてますます抜け出すのが難しくなる。だから1日も早く抜け出せるよう支援すべきだ」という考え方につながるでしょう。

 そこで、第三者が閉じこもっている本人に直接会って、他人との接触に慣れさせ、外出を促し、フリースペースなどの支援の場に参加できるようにすることで、不登校/ひきこもり状態から早期に抜け出させる支援方法として「家庭訪問」(アウトリーチ)を思い浮かべる人がおられると思います。

 特に、不登校/ひきこもり支援機関の場合、家に閉じこもっていて来所しない不登校/ひきこもり状態の人に、どうやって支援を届かせるかが課題だ、と考えている所が少なくありません。

 そのため、近年では「メンタルフレンド」「訪問支援」などと称した家庭訪問を導入する支援機関が、官民を問わず増加しています。
 また「訪問支援機関」と呼ばれる、家庭訪問による支援を目的とした民間機関も存在しています。
 私がやっている相談機関でも、相談業務のなかで適否を慎重に判断したうえで家庭訪問を行うケースがあります。

訪問支援“強硬派”の考え方

 ただ同じ家庭訪問でも、その方針や手法は実施団体によって異なります。
 あくまでザックリとまとめたらの話ですが“強硬派”“積極派”“慎重派”といった違いを見出すことができます。

 この違いは、不登校/ひきこもり状態の人を異常視するかどうか、不登校/ひきこもり状態が長引くことをどう考えるか、支援目標を「直す」ことに置いているかどうか、などに表れているように感じられます。

 “強硬派”として挙げられるのは、拙著に収録したメルマガ第118号でも取り上げたことがある「アイ・メンタルスクール」などの宿泊教育機関です。

 今から14年余り前に監禁致死事件を起こしたこの機関をはじめ、強硬な家庭訪問を実施している機関の共通点は、不登校/ひきこもり状態の人を異
常視して「直す」ことで学校や社会に復帰させることを目的としており、その方法として全寮制で指導していることです。

 すなわち「学校や社会への復帰は、本人を入寮させなければ達成できないから、家庭訪問して断固として入寮させる」という方針を掲げているわけです。イメージとしては「収容」と言ったほうが適切でしょう。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。