確かな再出発のために(後編)
間に合わなかったとき
さて、学校内外のスケジュールから外れた結果、本人は次の進路を無理にひねり出すことなく「ああでもないこうでもない」と迷い考え、揺れ続けるでしょう。
その結果、思いのほか早く自分に合った生き方を見つけて、入試や次年度からの学校生活などに間に合う子が出てきます。
反対に、結論を出すことができないまま、学年末や卒業を迎えてしまう子も出てきます。
そこで、後者すなわち年度内に結論が出せなかった子は、次年度以降どうすればよいのでしょうか。
中学3年生だと卒業になりますし、進級できない高校生だと、留年か中退になります。しかし、ここで無理をせずに、アルバイトをやったり学生生活を続けたりしながら、揺れ続けることです。
そうしているうちに「進路希望をかなえる(選んだ進路をまっとうできる)力」も回復してきます。
その末に見つけた進路は、本人に合った確かなものです。もう心配ありません。
このように考えると「学校内外のスケジュールに合わせて無理な進路選択をして、その結果挫折すること」より「学校内外のスケジュールから外れて、その結果時間をかけて自分に合った進路選択をすること」のほうが、本人が受けるダメージは浅いと考えられるのです。
「学校内外のスケジュール」より「本人のペースとタイミング」のほうをとる。という私の提案には、こういう意味があるわけです。
周囲が心がけること
ところで、このようにお話しすると「うちの子は次の進路希望をもう出している。無理しているのでは?」と心配になる親御さんもいらっしゃるかと思います。
しかしその場合でも、先々深刻な状況におちいらないよう今から心がけていれば、まったく心配いりません。
まず、無理をしているのではなく、本心から希望している進路かもしれません。また、私がお話ししていたような「無理にひねり出した」場合であっても、その進路が必ず続かなくなるとは限りません。いずれにしても、本人の希望どおりに手続きを進めていくことです。
必要な心がけは「次の進路に進んだあと、長続きしないで挫折したときにあわてない」ということだけなのです。
たとえば、不登校経験者を積極的に受け入れている教育機関に入学したが、途中で通わなくなってしまったとか辞めてしまった、という場合「進路選択のときに無理していたのかもしれないな」と、本人の切ない気持ちを推測することができれば「自分で選んだ進路なのに」などと、本人を不必要に責めずにすむわけです。
そうすれば、本人の立ち直りは早まりますから、そのうえで進路選択をやり直せばいいのです。再出発は何度でもOKと考えましょう。
初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第90号(2004年12月1日)
====================
※不登校相談にたずさわるなかで「進路希望をかなえる(選んだ進路をまっとうできる)力」の回復がこの時期に間に合うかどうかが、進路選択の成否を左右する一因であることを何度も経験しています。ただ、間に合わなかったらおしまいなのかと言えば「年度内に結論が出せなかった子」のひとりである自身の経験からも「先のことはわからない」「先々自分に合った進路が見つかるかもしれない」という希望を捨ててはいけないと考える私です。
※「不登校状態からの進路選択」をテーマにした4回シリーズはこれで終わりです。タイムリーなこの時期、お悩みの本人や親御さん、学校の先生などが参考にしていただければ幸いです。
※このメルマガバックナンバー掲載文、拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本は一部を除き転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。
※この記事をお読みになってメルマガ『ごかいの部屋』を読みたくなられた方は、こちらの配信サイトのページで読者登録をお願いいたします。
※私が担当し当事者グループ「ひき桜」代表の割田大悟氏が担当補佐をつとめる毎年1回の不登校・ひきこもり合同家族会「ダべるの会」が12月12日(土)に開催されます。「しゃべるの会」とは違いテキストを用いない茶話会です。ご関心のご家族様は↓のブログ記事をご一読のうえ、ご参加をご検討ください。