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当事者の本音トークを聞いて(後編)

それまでの当事者語りとの違い

 一方、一番後ろの方で聞きながら最終的に思ったことは、今日のシンポジウムの最大の特徴は≪てんでばらばら≫ということ。
 これほど、雰囲気も違えば言いたいこともそれぞれ、の当事者語りは、しかし考えてみれば珍しいと思いました。
 そして、これでいいんだよな~、と思いました。

 振り返ると当事者が語ることは今までだっていくらもあったわけですが、誰かの思惑であったり団体の思惑であったり、そういうものがどこかに潜んでいて全体を覆っている、そんな印象がこの種の集まりには必ずありました。

 すると、どうしても当事者の語りといいながら、内容は暗に期待されているストリーをなぞるものになっていたと思います。
 ここまで苦しいことばかりだった弱い立場の方々、期待に沿ったり、空気を読みすぎたりのサービス精神が出がちだったと思います。

自分の生き方を見つけた当事者たち

 ですが、今回は主催も進行も登壇者も(丸山注:ふたりの司会者も)みんな当事者・経験者。
 しかも相当な戦歴のあるつわもの揃い。
 それぞれが自分で見つけた自分の生き方を自分風に語っていた、と私は感じました。

 ひきこもりのゴールは、≪自分独自の生き方・自分が納得できる生き方≫を見つける(探し続ける)ことだと、1日目の講座で丸山さんは語っていましたが、2日目の登壇者はまさにその実践者に見えました。
 さきほど言ったみんな≪てんでバラバラに見える≫その奥に、そのような共通点が輝いて見えるような気がしました。

ぜひ後に続いてほしい

 こういった集まりでは、初めて、それを私は感じることができました。
 そして当事者発信、ということはこういうことなんだな~、と思いました。
 そういう意味で今回のセミナーは、歴史に残る1ページになる、と思いながら私は帰宅の途につきました。

 付け加えるなら、このセミナーを聞きに来ていた人々も、ほんとに多様でした。
 当事者の方も多かったし、親や、学生、あまりわけのわからない感じの人もいました。

 反応も様々。
 これも今までにない印象で、よかった、と思います。

 丸山さん、パネリストの皆さん、お疲れさまでした。
 ほかにも発信できる人、したい人はぜひ後に続いてほしいと思います。

☆引用ここまで☆

当事者はどう見られたいか

 このように北村さんは、ひきこもり支援をめぐる社会の動向への批判や政策提言に関する発言を挙げてくださいましたが、私が付け加えるとすれば「(自分がよかったと思う支援は)8人目に巡り合った精神科医が自分を症例(分析の対象)としてではなくひとりの人間として見てくれたことと「新ひきこもりについて考える会」や自助グループに参加していたこと、という林さんの発言でしょうか。

 この発言は、去年12月1日に転載したメルマガ149号でお話しした「周囲の人々が当事者をどう見るか」という点や、前々回の後半部分でお話しした“「家庭」と「支援機関」以外の人間関係や場が不足している” “そういう人間関係や場が身近にある本人は、ない本人より歩みが早い”ということを示していると考えられます。

 次回からまた、前々回から論じているテーマに戻りますが、せっかくですので、次回はセミナーでのパネリストの発言を引用しながら、当事者が支援を受けやすくなる方策を考えます。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第193号(2012年4月11日)

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※当事者経験者が登壇するプログラムを入れた不登校/ひきこもりイベントは当時からありましたが、それは主催団体が支援した当事者(卒業生)へのインタビュー形式(=主催団体のPR手法)だったり、支援機関が企画開催したイベントに呼ばれて体験を語る講演だったりでした。つまり、北村さんが書いてくださったように当事者経験者が企画し登壇し、体験談抜きに意見を主張するイベント=当事者発信型ひきこもりイベントは、林恭子さんが言うようにこの「第18回青少年支援セミナー」が初めてではないかと考えられます。

※このメルマガバックナンバー掲載文、拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。

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※今週土曜日(5月15日)、ネット番組『ワーホリラジオ「ヒルトーク」』の第7回が開催され、私がゲストをつとめます。ひきこもり状態などで生きづらい方だけが聴けるトーク番組。今回は私の体験談や仕事・活動の話はそこそこに、好きなことで楽しくおしゃべりする稀有な機会です。かつての私と同様にひきこもり状態の方や生きづらい方とネット越しに交流するのが楽しみです。ご関心の方は↓の公式ブログ記事をご覧ください。


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