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〔経験者は同じことを言う④〕生活の質(QOL)の向上から(前編)

※2002年10月に創刊し、掲載文が200本を超えたメールマガジ『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本(予定)の掲載文を、毎週1本ずつ転載しています(字句や一文など小幅な修正をしている場合があります)。

※筆者である私が10年以上前から書いたり話したりしていることと、同じことを書いたり話したりしている元当事者がいます。引用なのに「丸山からの引用」と明示しない場合もありますが、多くは明示のうえでの引用または偶然の一致です。そこで今月は、そういう部分が含まれている掲載文を転載しています。お読みになって「この部分はあの人が話して/書いていたことと同じだ!」とお気づきになる方がいらっしゃるかもしれません。

※なお、今回にかぎり6年前に書いた文章を転載します。また末尾で「誰の言葉と同じか」「誰が引用しているか」を“種明かし”します。

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本人の生活の質(QOL)への着目

 私が実践している不登校/ひきこもり状態に関する相談や家族会の柱のひとつに<「学校/社会に戻るかどうか」より「今の生活をどうするか」を考えるほうが先決>というものがあります。その内容は、

*本人が今やっていること、熱中していること(インターネット、ゲーム、読書、家事手伝い、ランニング、等)を認めながら「やり過ぎによる弊害や生活に支障をきたしている部分についてのみ対策を講じたり本人と話し合ったりする。

*そういう生活を認めずに学校/社会復帰への努力(支援を受けるなど)を要求しているかぎり、生活の内容に対しては手つかずのままになり、本人が復帰に向けての努力ができるようになるまで延々と年月が過ぎていく結果になりがち。

*逆に、そういう生活を認めてその内容に関与していけば、本人が自分の生活について前向きに思索したり改善へ向けて実行したりして、生活に動きが出てくる可能性が開けていく。

 といったことです。

(筆者注:上記を内容とする文章は来年転載します)

 「クオリティ・オブ・ライフ(QOL)=生活の質」という言葉をご存じだと思います。前述のような私の考えは、まさに「不登校やひきこもりの状態で在宅生活を送っている人たちの生活の質(QOL)を向上させる」ということなのです。

「生活を変える」ではなく「生活に加える」

 不登校/ひきこもり状態になると、エネルギーが枯渇するうえ、罪悪感や負い目が強くて人の目が気になり、人の評価に敏感になります。そのため外出したり家族以外の人と会ったりすることが困難です。

 そのような段階では、学校/社会復帰への努力どころではありません。必然的に家のなかでの生活、いわゆる「在宅生活」となり、そのなかで関心を持てること、好きなこと、やりたいと思ってなおかつ実際にできること、だけをやるようになります。

 このような本人の状態に対して、ご家族をはじめ周囲の人々は「この生活を変えさせなければ」と考えがちです。

 これに対し私は「この生活を<変える>のではなく、この生活に<加える>」という考え方をしています。つまり、本人が今やっていることを禁止または制限して学校/社会復帰へ向けて努力する生活に変えるのではなく、今やっていることを促進することによって、その内容が多様化したりやることが増えたりすることをめざすのです。

 たとえば、本人が家事をやってくれる人なら、やってもらうことを徐々に増やしていきます。読書好きな人なら、読破する本が増えていくよう読書に集中できる環境を整えます。ランニングしている人なら、ランニングの回数や距離が増えていくよう応援します。

 このように、家族公認のなかで何かひとつのことをやっていれば、そこには充実感や達成感が生まれてきます。そしてじゅうぶん満足した本人はほかのことをやりたくなり、やることが新たに加わります。

 この繰り返しによって在宅生活が多彩なものになっていけば、本人は自己肯定感が回復し、外に関心が向くようになって、外出することや人と会うことへの抵抗感もやわらいでいくと考えられます。

 また、ゲームやインターネットに熱中して生活が乱れている人には「生活環境」や「使い方」を改善するための対応や、家族全員の生活をより楽しくするための対応――話し合いを含めて――をなさることです。

 そのような対応の積み重ねによって、今の「ゲームだけ/インターネットだけ」という生活から新たにやることが見つかり「ゲームと○○/インターネットと○○」という生活になっていくことでしょう。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。