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通学してれば安心か(前編)

※一昨年度と昨年度の2年間、2002年10月に創刊したメールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文を転載してきました(字句や一文など小幅な修正をしている場合があります)。

※先週お伝えしたように、今年度からはメールマガジン(メルマガ)にかぎらず過去に書いた文章を毎月1本転載していきますが、時系列にすることによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう書き進めていきたいと考えています。

※そこで今月は、メルマガ初期の文章を再び転載します。おととし7月前半に2回にわたって、31年前に受講していた講座の受講生交流紙に私が書いた連載記事の第1回と第2回を転記して補足を加えた文章を転載しましたが、きょうはその第5回に関する文章を転載します。

※「不登校状態=ひきこもり状態」「不登校になったら学校復帰するしか道がない」という時代(30年くらい前)に書かれたものを紹介する文章のため、今では使わない言葉を使っていますが、書き換えずにそのままにしてあることをご承知おきのうえお読みください。

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不登校体験から得たものを31年前に論述

 私が社会人1年生だった年に、ある講座の受講中に受講者仲間が創刊し私が発行を引き継いだニューズレター「こうざつうしん」に連載した記事『登校拒否になると にんげんが見えてくる』を掲載します。

● 第5回 登校してればあんしんか

 こころの悩みをもつ子どもは、まわりのおとなたちにその悩みに気づいてもらい、救いをもとめるためのカードとしてさまざまな症状をあらわす。カードは、子どもたちのいろいろな行動であってよいはずなのに、なぜ「学校に行かない」ということのみがこれほどまでに効果的な切り札となりえるのだろうか。わが国の高学歴社会構造の荒波をまともに受けている家族力動、そしてあまりに画一的な学校教育のあり方などに内在する複雑な問題が、登校拒否の急増に深く関与していることは疑いのない事実である。
                            (山崎 晃資)
            「慎重な登校拒否議論を」<『あも』3号 より >

 解 説

 今回は、登校拒否体験の“収穫”を、さらに二つお話します。

 第1に、学校を相対化できるようになったことです。たとえば、1年少し前、当講座のOGの金田さんが所属している「校害TELTEL」の主催するシンポジウムに参加したことがありますが、そこで出された意見は、 “脱学校” や “反教育” の意味あいを込めたものばかりで、学校化社会にどっぷりの、一般の人々(登校拒否前の私も)には、とても理解できそうにないものでした。  しかし私は、それらの意見を何の抵抗もなく傾聴していたのです。やはり、一度学校から離れた経験が、学校を絶対視する価値観を変え、学校を多くの教育手段のひとつと捉えることを可能にしていたと言えそうです。

 私は、母校の教壇に立って10ヶ月になりますが、実際、現場にいますと「現在の単線型の学校制度の“末路”が見えてくる日は近い」という印象を拭えないのです。

 第2に、いわゆる「登校拒否」と「普通」の区別なく生徒をみることができることです。

 世間では「学校における生徒の問題─いじめとか無気力とか─と、学校に来ない登校拒否生徒の問題とでは、後者の方が深刻だ」ということが、無条件に信じ込まれているようです。「登校拒否は他の行動より1ランク劣等」とでもいうかのように。

 しかし、たとえば、学校に行かなくても、それによって心理的混乱に陥っていなければ、心配するには及ばないし、反対に学校に行っていても、悪質ないじめを繰り返していれば、非常に心配なわけです。ですから現在の私には、登校拒否児と他の生徒との間に、本質的な違いがあるとは、とても考えられないのです。

 今回掲載した文章は、東海大学医学部の精神科教授が「登校拒否だけが突出した問題行動である」という常識的捉え方の深層を抉り出し、疑問を提出した部分です。

 先日「登校拒否、史上最悪」というニュースがありましたが、登校拒否問題を「悪く」しているのは「登校拒否の増加」それ自体ではなく、学校に行けないというだけで大騒ぎする「世間」ではないか、と私には思えてなりません。
                               丸山 著
                 『こうざつうしん』(1991) より転載

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。