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不登校・ひきこもり授業(後編)

2時間目「化学」

 人は誰でも、心に“エネルギータンク”を持っています。そこで、不登校状態の子もひきこもり状態の人も、最初は活動するエネルギーが減り続け、つ
いには枯渇状態になります。

 それ以降も、エネルギーは周囲の対応が適切だったら増加し、不適切だったら減少します。そうやって増減を繰り返しながら、全体で適切な対応が不適切な対応を上回れば、本人のエネルギーは差し引きプラスとなり徐々に増加していきます。

 こうして“水位”が上がってきて、ついには“心のエネルギータンク”の容量を越えた、つまりあふれ出したとたんエネルギーは外気にふれて化学反応を起こし、温泉のように噴き出すのです。

 不登校/ひきこもり状態の人が新しい一歩を踏み出したとたん、周囲が驚くほどの活動ぶりを示すことがしばしばあるのは「心のエネルギー」のこうした特性によるものなのです。

3時間目「免疫学」

 花粉症のシーズンがやって来ました。今年は花粉の飛散量が例年より激増するため、すでに発症している軽症者は重症化し、発症していない人のなかから新たに発症する人が出る、と言われていますね。

 この花粉症をはじめとするアレルギー疾患の原因論としてよく言われるのが「コップ理論」です。
 すなわち、各人が持っている“コップ”にアレルギー物質が注がれ、それがあふれ出した瞬間に発病する、というメカニズムです。だからアレルギー疾患は、ある日突然発病したように見えるわけです。

 不登校/ひきこもり状態も、これに似ています。

 ある日突然、些細なきっかけで学校/社会に出られなくなった人たちを「その程度のことで出られなくなるなんて、何てひ弱なんだ」と周囲は責め立てるわけですが、そうではなく「長い間本人の心に積み重なってきた<無理なこと>があふれ出した」というメカニズムなのです。

 「コップが大きければあふれないのに」とお考えの方もおられるでしょう。アレルギー疾患についてもそう言う人がいます。しかしコップが大きくてもアレルギー物質が増え続ければ同じことです。たとえば「いじめ」をアレルギー物質にたとえればおわかりいただけると思います。

 優先すべきは「アレルギー物質の少ない環境づくり」なのです。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第186号(2011年3月9日)

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※転載作業をしていて、花粉飛散量が10年前も激増すると言われていたことに気づきました。今年も多く飛散すると言われていますので、修正しないですみました(笑) なお、前編に転載した“1時間目”の文中「理解者」という言葉ですが、私は現在「本人が学校/社会に出ていないことを気にしない人」を含めています。

※このメルマガバックナンバー掲載文、拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。

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※来たる3月14日(日)に、横浜市港南区の地域福祉施設がオンラインを併用して開催する講演会でひきこもり講演を行います。会場は原則として港南区民が、オンラインは全国どこにお住まいでもZOOMを操作できる方が、それぞれお申し込みいただけます(会場は横浜市民でも大丈夫。横浜市外の方は要問い合わせ)。申込締切は1週間早い3月7日(日)ですので、参加ご希望の方は↓の公式ブログ記事をご覧のうえ、お早めにお申し込みください。


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