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<願い>と<思い>を統合する(後編)

両方を認める対応を

 前述の説明から<願い>と<思い>の違いをご理解いただければ、本人の言動がどちらから出たものなのかが区別できます。そのうえで両方とも肯定なさればよいだけです。

 「学校/社会に戻らなければという気持ちは当然だよね、でもそれとは相反する~という気持ちがあるんだね」などといったぐあいです。

 ただ、本人は多くの場合<思い>から出る気持ちには気づかず「自分は学校/社会に戻りたいのに、なぜ戻れないんだろう」などと悩んでいます。

 それは<思い>が心の奥底、言い換えれば無意識レベルの場所にあるため、そこから出てくる気持ちに気づきにくいからです。

 その場合は、本人が何を言っても否定しない会話を続けていくなかで<思い>から出たと思われる言葉を見つけ出し、やはり「学校/社会に戻らなければという気持ちは当然だよね、でもそれとは相反する~という気持ちがあるんだね」などと応じることです。

 そうすると本人は、自分が感じていた気持ちには2種類あることに気づき、自分の気持ちを俯瞰(ふかん)して整理することができるようになっていきます。

 そうなると、いずれ<願い>と<思い>のどちらか片方を捨てることはできないという認識のうえに「両方を極力活かす組み合わせ=統合の方法」を考える段階に進みます。これが進展すると葛藤が無くなっていくだけでなく、最終的には新しいものが生まれます。

 それこそが、生きていくための揺るぎない「基盤」「軸」となる<自分らしい生き方あるいは人生観>なのです。

 私の相談業務歴はもうすぐ19年になりますが、10年以上前から一貫して、この「<願い>と<思い>の統合」を目標にしています。

 いかがでしょうか。次回は前述の<自分に合った生き方あるいは人生観>の具体例をお話しします。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第232号(2018年10月27日)

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※1月12日の本欄に続き、前編と後編の量が約2対1になってしまった今回の文章。不登校/ひきこもり状態の心理メカニズムのひとつとして、12年前メルマガ176号に『<願い>と<思い>の葛藤ロード』という文章を書いた頃から支援目標にしている「<願い>と<思い>の統合」への道筋をまとめています。講演の多くで図示して説明している(ヘッダー写真参照)うえ、連続講座「ヒュースタゼミナール」の第1回でワークショップに使っていますので、ご存知の方も多いと思います。

※このメルマガバックナンバー掲載文、前記『<願い>と<思い>の葛藤ロード』を含め拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載していませんので、ご関心の方は同著を入手してご一読ください。

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