見出し画像

〔親の言葉から②〕「苦しんでいるように見えません」(前編)

態度が悪い?

 こういう疑問を投げかける親御さんも少なくありません。自宅でのわが子の様子を見ていると、気楽に過ごしているとしか思えない、とお感じになるようです。

 「昼前に起きてくる」「(不登校状態の場合)学校の授業が始まる時間まで不機嫌」などといった不穏な点もあるにはあるが、そのあとはいたって穏やか。テレビを見て笑ったり、ゲームを楽しんだりしている。つらそうな素振りなどみじんも見せない。カウンセラーは「本人はつらいんです」と言うが、うちの子は違うケースではないだろうか・・・。

 自宅でのわが子の様子をこのように受け止めていると「うちの子は不登校ではなくただの怠け休みではないのか」という疑いが生じてくることもあるでしょう。

 反対に、本人が常に不穏な状態、あるいは荒れている場合も、苦しんでいるように見えないでしょう。

 学校に行けない、社会に出られない、という自分の状態に悩んでいるとは、とても感じられないような言動(生意気、一人前の口を利く、など)に終始している、すなわち「態度が悪い」場合です。

 たとえば、対応への反発や「おれのことなんかどうでもいいんだろう」という言葉を前回挙げましたが、それらに対して親御さんは、「甘ったれるな」「わがまま言うな」と言いたくなることでしょう。

 そういう態度・言動を示されると「この子は苦しんでいるのではなく、ただ甘えているだけ、わがままなだけ」と思いたくもなるでしょう。

感情表出の難しさ

 不登校/ひきこもり状態は、何をもって「苦しんでいる」「つらい」と言
えるのでしょうか。

 まず一般論として、人は自分の感情を常に表出するわけではない、ということがあります。

 誰でも、どんなときでも自分の感情を表出できるわけではありませんよね。本人の性格、背景、その場の環境(周囲との人間関係)、などいろいろな要素が絡み合って、表出できるかどうか分かれます。

 まして、ひとりで閉じこもっていながら感情表出するのは、簡単なことではないと思います。

 「だから『苦しいんだ』『つらいんだ』と訴えればいいじゃないか」
 「訴えてくれないと気持ちがわからないからどうしようもない」

 おっしゃるとおりです。

 ただ、前述のとおり、いろいろな要素があることを考慮しなければなりません。

訴えられない理由

 まず、そもそも不登校/ひきこもり状態が、社会的に認められていない行
為であることを重視する必要があります。

 そういう背景がありますから、本人の多くは、自分の親だって自分の行為を認めてくれないと確信しています。そうであるかぎり、親に苦しさ・つらさを訴えても、受け止めてもらえるとは思えないので、なかなか訴えようとしないでしょう。

 さらにやっかいなことに、本人たちは自分自身でも自分の行為を認めてい
ないことが多いのです。そうなると、たとえ親が認めてくれても、苦しさ・つらさを訴えることは困難です。なかには、訴えることにすら罪悪感を抱く人もいるのです。

 このように考えると、親御さんがわが子の不登校やひきこもりを認めていない状況では、お子さんが苦しさ・つらさを訴えていなくても、苦しんでいる可能性が濃厚です。また認めていても、お子さんが自分で認めることができないかぎり、やはり苦しんでいると想像できます。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。