見出し画像

「関係機関を利用する」という対応(後編)

両方の立場が混在する関係機関

 ここでひとつお断りしておきます。じつは関係機関の多くは、どちらの立場をとっているかがはっきりしていません。

 たとえば「不登校/ひきこもり状態に対して否定的な捉え方をせず、本人
の意思に沿うことを基本にしているが、長引いてはいけないので積極的に家庭訪問を行ってフリースペースなどの利用へと導く」(9月15日のnoteに転載した文参照)といった、両方の立場が混在しているような、中間的な立場の関係機関がもっとも多いと考えられます。

 そこで、そのような関係機関については「どちら寄りか」を見極めつつ、本人の性格や状態と合っているかどうかを判断したうえで選べばよいわけです。

長引かせないためなら何でもあり?

 最後に、以上のような、立場のはっきりしたところから中間的なところまである多様な関係機関について、ふたつの意見を申し述べます。

 まず、選択と利用の仕方は医療の場合と同じ、ということです。

 つまり、選択時には正確な説明と本人の同意(インフォームド・コンセント)を原則としているかどうかを重視する、また選択時も利用中も、ほかの機関に意見を求める(セカンドオピニオン)、ということです。
 いずれにしても「まかせなさい」「だまして連れてきなさい」などのような発言が出るところや、説明に嘘がありそうなところは要注意です。

 次に「長引かせないため」という目的なら、前述した「“トンネル”の途中に穴を開けて引っ張り出され~」と本人が感じる支援(たとえば連れ出すための家庭訪問)が、提供者主体の立場にかぎらず多くの関係機関に認められている(温度差はありますが)ことへの疑問です。

 確かに「本人の意思に沿って“トンネル”を歩かせ続けていたら長期化してしまう」というリスクは、多くの関係機関が恐れています。しかし、私は逆に“トンネル”を歩き通す力のある人たち、歩き通したい人たちまでが「長引かせないため」として歩き通す可能性を閉ざされてしまうリスクのほうを恐れます。

 事実、何年かかっても歩き通そうとしている、また歩き通した人たちは、無視できる人数ではありません。人生は一回きりです。自分の力で“トンネル”を歩き通せるなら、ぜひそれを応援したいものです。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第150号(2008年2月13日)

====================

※本稿に書いた関係機関を選択する際の判断基準は、12年経った現在もご活用いただける内容だと自負しています。特に近年提訴されている支援機関は、例外なく「否定的な立場=提供者主体」に該当しています。

※このメルマガバックナンバー掲載文、拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本は一部を除き転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。

※この記事をお読みになってメルマガ『ごかいの部屋』を読みたくなられた方は、こちらの配信サイトのページで読者登録をお願いいたします。一両日中に最新号が配信されます。

※来たる20日(日)、私にとって2度目の本格的なZOOM講演があります。定期的に開催されているオンラインイベント「第5回ワラタネット交流会」です。ここで私はゲストスピーカー兼グループファシリテーターをつとめます。詳細は↓のブログ記事をご覧のうえ、よろしければぜひご参加ください。


不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。