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「向上」か「充足」か(前編)

※2002年10月に創刊し、掲載文が200本を超えたメールマガジ(メルマガ)『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本(予定)の掲載文を、毎週1本ずつ転載しています(歳月の経過を踏まえ、字句や一文、一段落など小幅な修正をしている場合があります)。

※先月から、時期に関連させることなくほぼメルマガの配信順に転載しています。今月も引き続き「プロセスとそれに沿った対応」について書いた文章を順に転載していきます。きょうはその第6弾、6年前の4月に配信された第211号の掲載文です。

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本に収録した掲載文をもとに

 去る1日と2日に開催した「ヒューマン・スタジオ設立20周年記念イベント」に、多数ご参加いただきありがとうございました。

 1日に開催したイベントでは、同スタジオ20年の成果のひとつとして拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』の出版を挙げました。これは、同スタジオの正規業務であるメールマガジンの掲載文が収録された本だからです。

 そして、同書の出版からちょうど7年半。おかげさまで各方面からご好評の声をいただいており、5刷1万部が発行されるヒット作になっています。

 そこで今回は、前回の最後にふれた「向上させるための対応」と「とことん充足させる対応」について、同書の内容を参照しながら考えてみたいと思います。

状態が上がるとは

 先月の最初に転載した7年前の6月配信号(206号)からお話ししてきたように、不登校/ひきこもり状態のプロセスを「状態の線」で表すと、最初に急降下してからしばらく低い位置で推移し、エネルギーが回復するにつれて波のように上下を繰り返しながら、あるいは奥行きの長い階段のように横ばいと上昇を繰り返しながら、いずれの場合も全体として上がっていきます。

 「上がっていく」というのは、気持ちが楽になり、感情の起伏が緩やかになったり明るくなったり、家族との会話が増えたり、できることをやるようになったりすることです。そうなればご家族も「最悪の時期は脱したかな?」とひと安心なさることでしょう。

欲が出てしまう親たち

 しかし、学校/社会に戻れないでいることに変わりないし、前述のとおり“行きつ戻りつの繰り返し”とか“横ばいの時期が長い”といった段階が続きますので、ご家族をはじめ周囲の人々は「ここまで来たら次のステップへ」「そろそろ支援を受けさせて学校/社会復帰に向けて頑張らせたい」などと“さらに上を”というお気持ちが盛り上がってこられるのではないでしょうか。

 実際、この段階で親御さんが支援の利用を勧めたり家庭訪問などを申し込まれたりといったお話をよく聞きます。

 しかし、親御さんがこのような「向上させる対応」をなさっても、本人は「なかなか動き出さない」「支援を利用することをずっとためらっている」「そろそろと思って家庭訪問を依頼したら拒絶された」等々、予想と期待を裏切ることが少なくありません。

 なぜでしょうか。どうすればよいのでしょうか。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。