遊びを喪失した日々(前編)
※2002年10月に創刊し、掲載文が200本を超えたメールマガジ『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本(予定)の掲載文を、毎週1本ずつ転載しています(字句や一文など小幅な修正をしている場合があります)。
※今回と次回は、筆者である私が15年前の8~9月にかけて3回書いた「当時の気持ち・今の思い」と銘打った短期連載の2回目(中)と3回目(下)を転載します。15年前の「今」と、現在の「今」に違いがある箇所には注記を付けています。
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お稽古事もできない不登校状態
不登校時代、私にはやりたいことがありました。それは、当時コンプレックスだった“夏バテするひ弱な体”を鍛え、ガッチリした体型になることでした。
ただ、自分ひとりで実行しても三日坊主に終わることが目に見えていた私は、スポーツクラブに入ってマシントレーニングに通いたいと考えていました。
しかし私には、それができませんでした。
学校を休んでいるのに学校以外の場所に通うなんてことは、自分の規範意識が許さなかったのです。「学校に行っていない子どもには、人並みにお稽古事に通う資格なんかない」と確信していたので、恥ずかしくてスポーツクラブに通うことなどできませんでした。
事実この時代は、お稽古事の先生から「学校を休んでいるのに来るんじゃない」と言われ、入会を拒否された不登校状態の子がいたようです。
現在ではそんなことを言う先生は少ないでしょうし、何より、フリースクールなどに通っていれば学校が出席扱いにすることが増えましたから、不登校時代の私のような考え方の不登校状態の子は少なくなっていることでしょう。「塾には通っている」という子もいますし。
ただ、ひきこもり状態の人の場合はどうでしょうか。
どこにも行けないひきこもり状態
「自分と同世代の人たちが働いている時間に、自分だけ“仕事ではない場所”に通うことはできない」という規範意識に縛られている人が少なくないのではないでしょうか。
カルチャーセンター、スポーツクラブ、市民団体など、通うことができる場はいろいろあります。しかし、人目が気になるため、そういうところに入会することが難しいと思います(筆者注:執筆当時は当事者活動や当事者が参加しやすい会やイベントはほとんどありませんでした)。
まして、レジャーや恋愛を楽しむなんで、別世界のことのようです。
いきおい、できることと言えば、ひとりで買い物に行ったり自室でパソコンやゲームをやったり、ということに限られてしまいます。
興味があっても始めることができない、かつて熱中していたことを再開することができない──このような状態が長期化すると、何かをする意欲じたいが、だんだん減退していきます。
長期間使用していないバッテリーが放電して、いつの間にか電気が減ってしまうのと同じ現象です。
<後編に続く>
不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。