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対応の影響は雪だるま式に(後編)

捉え方と対応による影響の大きさ

 前々回転載した149号でお話しした「不登校/ひきこもり状態への捉え方・見方」によって「対応が大きく違う」ことを使ってご説明しましょう。

 まず「生きざま」と肯定的に捉える方は、本人の意思を「せめてもの願い」や「必死な気持ちの表れ」つまり「まじめな考え」と解釈します。そのため、誠実な対応を行うことになります。

 それにより、対応が本人の状態とかみ合って、本人は信頼感と安心感を持ち、明るさや元気を回復していきます。
 そうなると、本人は周囲の支えを励みにして、いずれ動き出すときが来るわけです。

 これに対し「病理」と捉える方は、本人の意思を「症状のひとつ」と解釈します。そのため「治してあげる」という“治療的姿勢”をとり、心理カウンセリングや精神科を利用する、あるいは入院させようとするなどの対応を行うことになります。
 
 それにより、本人は「病気扱いされている」という不信感や「自分は病気なのだ」という絶望感を深めていきますから、ますます身動きがとれなくなり、周囲にとっては「どうしても治らない」という状況になりがちです。

 また「悪事」と捉える方は、本人の意思を「悪だくみ」とか「わがまま」と解釈します。そのため「性格を改善しよう」とか「わがままを許さない」などという“対決姿勢”をとり、説教や策略、あるいは強硬な手段による対応を行うことになります。

 それにより、本人は「何を言ってもとりあってくれない」「自分の気持ちが通じない」という反感や疲労感が募っていきますから、さらに心を閉ざしたり荒れたりして、周囲にとっては「ますます手に負えなくなった」という状況になりがちです。

 このように、不登校/ひきこもり状態を肯定的に捉えて対応すれば、その
効果が雪だるま式に大きくなっていくのに対し、否定的に捉えて対応すれば、その逆効果が雪だるま式に大きくなっていくわけです。

対応が逆効果になったとき

 さて、今の話は対応についてでしたが、もうひとつ重要なことは「対応が逆効果になった場合どう受け止めるか」という、事実認識のあり方です。

 まず、常に適切な対応をしたいと考えている方は、逆効果になったら「対応が失敗した」と受け止めます。「自分」に焦点を当てているわけです。

 そのため、次の機会には対応(方法やタイミング)を改善します。そういう繰り返しによって対応が進歩していき、その好影響は雪だるま式に大きくなっていきます。

 反対に、自分の対応が正しいと信じて疑わない方は、逆効果になったら「対応が通じないほど重篤な状態だ(あるいは悪質な人間だ)」と受け止めます。「相手」に焦点を当てているわけです。

 そのため次の機会には、対応を改善するどころか「これでもか」「まだ足りないか」とばかりに、逆効果になった対応をますます強化していきます。そういう悪循環によって不適切な対応が繰り返され、その悪影響は雪だるま式に大きくなっていきます。

 「試行錯誤しながら、より望ましい対応を見つけていく」という姿勢が大切なのです。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第154号(2008年6月11日)

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※本稿の導入に使った情報は執筆当時のものですが、最新情報を検索したところ、次のような記事がありました。事態はますます深刻になっているようです。

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