見出し画像

結末を告げる体内カレンダー(後編)

変化は「時計反応」のように

 ところで、自らも経験者であり、かつ現在相談業務にたずさわっている私としては、ほかの経験者の体験談や相談を受けたケースを思い起こすと、不登校/ひきこもり状態には今述べたような変わり目が「あらかじめ用意されている」と感じられることがしばしばです。

 メルマガ第10号で、出身高校の先生が書いた「時計反応」という化学反応の話を紹介しました。これは「ある薬品どうしを混ぜると、そのときには何も起こらないが、しばらくたつと突然、まさに突然目に見えるような変化(たとえば色の変化)が起こる」というものでした。

 これを不登校/ひきこもり状態にたとえれば「適切な対応をしてもそのと
きには何も起こらないが、しばらくたつと突然、目に見えるような変化が起こる」と言うことができます。

変わり目は「体内カレンダー」のように

 「体内時計」という医学用語をご存じのことと思います。人間の体には時計の機能があり、24時間余りの「概日リズム」によって、夜に眠くなり朝に目が覚める、といった現象が必ず起こるわけです。

 私はこれをもじって「体内カレンダー」という概念を提唱しています。
 人間の体にはカレンダーの機能があり、人それぞれの「歳月リズム」によって、長く葛藤に苦しんでいても変わり目が必ずやってくる、という意味です。

 もちろん、生活が乱れていると「体内時計」が狂ってくるのと同様、葛藤によって心が千々(ちぢ)に乱れるばかりでは「体内カレンダー」も狂って、変わり目が先送りされてしまうでしょう。

 周囲の適切な対応の積み重ねや、本人を支える人・事・物・希望のどれかがあれば「体内カレンダー」は順調にめくられ、変わり目が日一日と近づいてくる、というケースが多いように思われます。

 しかし、経験者のなかには「変わり目が来るのが遅すぎた」「長引かないよう早めに厳しく支援すべきだ」などと語る人が少なくありません。
 「時計反応」や「体内カレンダー」のようにして、自然に変わり目が来ることは良くないのでしょうか。今年度もさまざまな視点から考えます。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第152号(2008年4月9日)

====================

※この転載企画も2年目、後半に入りました。今年度は水曜日に移って残りの50本を毎週1本ずつ1年かけて転載してまいります。1年間ご愛読ご支援を賜りますよう心からお願い申し上げます。

※このメルマガバックナンバー掲載文、今回の文中で引用した号を含め拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。

※この記事をお読みになってメルマガ『ごかいの部屋』を読みたくなられた方は、こちらの配信サイトのページで読者登録をお願いいたします。今年度は毎月第3金曜日に配信予定です。

※10日後の17日(土)に「しゃべるの会・ひきこもり編」を逗子市で開催いたします(感染状況によりオンライン開催に変更することがあります)。今回はオンライン開催に変更した場合のみ参加できる方の「仮申し込み」も受け付けますので、全国どこにお住まいでもご関心の方は↓の公式ブログ記事をご覧のうえご参加をご検討ください。


不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。