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「点」ではなく「線」で見る(後編)

状態の上下に一喜一憂する

 このように、不登校/ひきこもり状態のプロセスは、多くの場合上下の波の繰り返しです。“右肩上がり一直線”などという順調なプロセスはほとんどないと思います。

 そのなかで親御さんの多くは、本人の状態が上向いてくると「このままいけるのでは」と期待なさいます。反対に下降してくると「状態が良かったときの努力が無に帰した」と失望したり「このまま悪くなるいっぽうなのでは」と心配がふくらんだりなさいます。

 つまり、わが子のそのときどきの状態の良し悪しに一喜一憂なさっているわけです。

 しかし、これまでご説明してきたように不登校/ひきこもり状態の典型的
な経過は「初期には下降線をたどり、その後しばらく低い位置で横ばいを続けたあと、波の上下を繰り返しながら全体として上がっていく」という“1本の連続した線”を描くものです。

 しかも、波が天井を打っている時期に蓄えられたエネルギーが、波が底を打つ(それ以上の下降を食い止める)ために使われるのです。

すべての場面は途中経過

 このように考えれば「波が天井を打っている期間の前向きな本人の言動が、波が下降するにつれて消滅していく」というプロセスの正しい見方は「あのときの言動は無意味だった」などではなく「あのときの言動は実績として残るし、次へのエネルギー源にもなる」「状態に無駄な変化も無駄な時期もない」というものではないでしょうか。

 だとすれば「そのときどきの状態に一喜一憂する」というのは、そうした本人のプロセスの一時期だけに着目して評価する、すなわち「点で見ている」ということになります。このような見方しかできないと、行き当たりばったりの対応の繰り返しになってしまうでしょう。

 本人の状態の波は、すべてつながっています。だから無駄な時期はありません。したがって、そのときどきの状態を「過去から未来へと向かう流れのなかの一場面(途中経過)」として受け止めること、すなわち「線で見る」ことです。そういう見方ができれば「今本人はどの時期を進んでいるか」と大所高所に立って判断しながら、じっくり腰を据えて一貫した対応を続けることが可能になるでしょう。

 さて、こうして本人は状態の波を繰り返しながら、望む道に向かって動き出すまであと一歩の地点に到達します。ところが、前回の最後にふれたとおり、ここから足踏み状態になる人が少なくないのです。

 なぜでしょうか。この段階ではどう対応したらよいのでしょうか。

 ・・・字数が尽きました。このお話は次回に回します。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第207号(2014年8月13日)

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※前回に続いて、不登校/ひきこもり状態における動き出す(居場所や支援機関やフリースクールに通ったり別室登校したりする)前の段階で、状態のプロセスにありがちな傾向と、それを親御さんがどう見たらいいかを説明した文章です。

※不登校時代の自分自身もそうでしたが、本人はもちろん親御さんも状態の上下に一喜一憂するのが常です。そのため家族相談や家族会で私は、ご家族が本人の状態の推移を「点で見る」のではなく「線で見る」ようになることをめざしています。

※このメルマガバックナンバー掲載文、拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本はほとんど転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。

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