ツアートラックを走らせたい

ツアートラックを走らせたい。

ツアートラックとは、後ろのコンテナの部分にアーティストのフライヤーみたいなのが全面にプリントされて、さらにそのアーティストの曲なんかもゴキゲンに鳴らしながら走る、あの乗り物です。

ツアーに使う資材を運びつつ、ツアーや、ニューアルバムの宣伝の為に走らせてるんでしょうけど、やっぱり注目しちゃいますよね。

いつか全国ツアーとかする時は自分のツアートラックを走らせたいです。

その為にはツアートラックが走行中に流す用の曲を出さなければなりません。

「ネタを流せばいいんじゃないの?」

と、思うかもしれませんが、街中で走ってるトラックからネタを流しても、めちゃくちゃスベると思うんですよね。
基本的に僕のネタは、客席に座って、静かに観てるお客さん用に作ってるので、走ってるトラックから流す用に作ったネタではありません。
走ってるトラックから流す用のネタ以外は基本的に鬼滑りするだけです。

そうなると、全国津々浦々の街中をひたすらスベりながらトラックを走らせることになります。
絶対スベりトラックって言われます。

スベりトラックがマイナスの方向に有名になっていって、

スベりトラックを見たら一週間以内に不幸が起こる
スベりトラックが通った地域はその年野菜や米が不作になる
ドライブデートの時にスベりトラックが前を走ってたらそのカップルは別れる

とか散々な迷信が付いて回ります。

そうなったら、僕がめちゃくちゃ凹むのはもちろんでずが、何より傷つくのは運転手さんなんじゃないかと思います。
一生懸命仕事をしているだけなのに、町では嫌な顔をされ、来ないでと言われ。

スベりトラックの運転手してるとか、家族には絶対に言えません。
子供の寝顔を見ながら、「いつか俺の仕事を理解してくれる歳になったら伝えよう」と心に決めるでしょうね。

でも、ある時

「こいつの父ちゃんスベりトラックの運転手やってるんやってー!俺の父ちゃんが言ってたぞー!」

子供のクラスメイトに突然バラされて、その夜子供が聞いてきます、

「お父さん、スベりトラックの運転手じゃないよね?お父さんはミスチルのトラックの運転手だよね?そう言ってたよね?ミスチルのトラックの運転手やってるから桜井さんは弟みたいなもんって!」

運転手さんは、ついにこの時が来たか、という顔になります。
そして意を決して言います。

「よく聞け、武彦。実はお父さんが乗っているのは、ミスチルのトラックじゃない。」

「え!?、、、じゃあ、桜井さんは?」

「会ったこともない」

「でも、前にミスチルのベースの人が家に来たよね!?」

「あれは、お父さんの中学の時の友達だ。」

「ベーシストじゃないの?」

「家具屋さんだ。」

「じゃあ、お父さんは、何の仕事をしてるの?」

「スベ……エグザイルの運転手…。」

「エグザイルかぁー!すごーい!」

「うん、そう。エグザイル。ヒロさんとはパチンコとか一緒に行くしな。」

結局また嘘を重ねることになりますね。

それぐらいスベりトラックは関わりたくないものになります。

どうですか。
ツアートラックでネタを流すと、こんなことになるんです。

スベりトラックにならないように、"走ってるトラックから流れる用のネタ"を作ったら良いじゃん。

と思うかもしれませんが、そのネタを作るには、うけるようになるまでに何回かトラックで流さなければいけません。

結局、スベりトラック爆誕です。

運転手さんの悲しい嘘が増えるだけです。

やはりツアートラックで流すには、自分のネタではなく、自分の曲が良さそうです。

ツアートラックと、それ用の曲を出せるまで、がんばります。

#エッセイ #コラム #随筆 #ツアートラック

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