万引きGメンは今もどこかで見張ってる

たまにスーパーの万引きを捕まえる万引きGメンのドキュメントをやってるけど、あの万引きGメンという職業の人は、どのスーパーにもいるのか知りたい。

僕が普段使うスーパーにもいるのかな。
モニター室みたいなところでずっと見張ってるんだろうか。

まだ一度も生で万引きGメンが万引き犯を捕まえてるところを見たことがない。

見てみたい。

多分これは僕だけじゃないと思う。
正直、スーパーで働いてる人も、万引きGメンが出動したらテンションが上がると思う。

万引きはもちろん許せない行為なのは重々承知だ。
でも、ごめんやけど、テンション上がると思う。

万引きGメンも、自分でテンション上がってると思う。

薄暗いモニター室から飛び出して、『スーパーの出口』という晴れ舞台に立つわけだから。

「よっしゃ!」って言っちゃう時もあると思う。
もちろん、万引きは悪いことだ。
喜ぶことではないし、万引きを無くすためにGメンをやってるはず。
わかってる、わかってるけど、
「よっしゃ!」って言っちゃう時もあるんじゃないかと思う。

髪切った次の日や、新しいジャケットを下ろした日なんかは特にテンション上がると思う。
「一番いい日に万引きしてくれた」
とさえ思うはずだ。

「奥さん、レジ通してない商品あるでしょ、全部わかってるから、出してください」

と言ってる時も、チラチラ自動ドアに反射してる自分の髪型を確認してるはずだ。

"あれ?この角度一番カッコいいかも"

とか、思いながら、
「奥さん、店長室まで来てください」
って言ってると思う。

「奥さん、レジは通れても、俺は通さないんだよ」

とか、決め台詞を考えてる万引きGメンもきっといる。
決め台詞を考えるために、わざわざドトールとか行ってる万引きGメンもいるはずだ。

決め台詞が決まった次の日なんかは、言いたくて言いたくてしょうがないから、万引きを見つけた瞬間
「ありがとうございます!」
とか口走ったりしそう。

決め台詞だけじゃ飽き足らず、ローラースケートで登場しようと考えるGメンもいるかもしれない。

ローラースケートが滑れるようになるまで、近所の駐車場で練習して。
それでローラースケートの練習に疲れたら、決め台詞を考えにドトールだ。

駐車場とドトールの往復で万引きGメンの休日は暮れていく。

そして、滑れるようになって、満を持してローラースケートを履いてモニター室で待機してる時なんかは、練習の成果を見せたくて、早く登場したすぎて、ずっと

「万引きちょうだい!ほら、早く!万引きちょうだい!」

とか言っちゃってると思う。
もう、万引きして欲しくてたまらなくなっている。

ただ、そこまでキャラが仕上がってたら、従業員も、ローラースケートGメンに出てきてほしくなってると思う。

「あの人、昨日も遅くまでローラースケートの練習してたみたい」
「傷だらけになって、ずっとがんばってますよね。」
「あれだけ練習してたの知ってるから、そろそろ万引き、起きて欲しいですね」

とか、従業員もよくわからないテンションになってる。

それでいざ万引きが発生したりした時は、もう全員拍手喝采だ。
店内放送も気を利かせて、万引きGメン登場のテーマに切り替わる。

そして、鮮魚コーナーの銀の扉から颯爽とローラースケートGメンが勢いよく飛び出してきた時には、もう店内のボルテージは最高潮。

何も知らない買い物客は、

「え?フラッシュモブ?」

ってなると思う。

それくらいに店が1つになって盛り上がるような、ローラースケートGメンの登場を一度でいいから見てみたい気がする。

そして、もちろん、登場したからには、万引き犯を必ず捕まえて、決め台詞を言って欲しい。

今日もどこかでスーパーを見張ってる万引きGメンさん、お疲れ様です!

#エッセイ #コラム #随筆 #万引き #万引きGメン

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