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APLO2022-1 パナラ語 解説

Asia Pacific Linguistics Olympiad 2022(アジア太平洋言語学オリンピック2022)
第1問. パナラ語
ジャンル:統語
難易度:☆5
問題・解答は Problems by Year より引用。

APLO2022-1

前提

  • 語順はSVあるいはAVP。ただし目的語はPro-drop(代名詞は表示されない)

  • 主語・目的語が穀物・果物かどうかに依存して動詞に形態素がくっつく

  • 形態的能格性を持つ(動詞が自動詞なのか他動詞なのかの区別が重要)

Pro-dropということは動詞に直接形態素として人称標識が含まれてないといけない (じゃないと日本語訳が成立しない)ので、 最初からその可能性を疑ってかかる。

ある形態素が主語・目的語が穀物・果物かどうかに依存するというのはかなり気づきにくい。 JOL2022-5のティンリン語でも目的語が肉類か穀物類かで動詞「食べる」を使い分けていた。 こういう言語は多いのかも。

能格性については形態素解析を表にまとめた結果分かるのであって、 最初から気づく必要はない (でも能格言語の概念を知ってないと、は?なんやこれ?ってなるかも)。

形態素対応(動詞は語幹のみ)

名詞語幹

名詞の単複標識

Nは名詞語幹。A単数のみ標識が単語として独立することに注意。

動詞

その他(この時点では全て不明としておく)

不明な形態素の機能解明

ここからが鬼門。 名詞語幹と動詞語幹はちょっと時間をかければすぐ分かるが、 これ以降はかなり難しい。

日本語訳を見て明らかに形態素として存在してそうなのは、 時制と主語/目的語標識(厳密には絶対格/能格標識)。 特に後者は目的語がPro-dropされている関係上、 仮に標識が存在していないと日本語訳が不可能である。

総評

平均点は7.64。☆5なのにこの平均点の高さはさすが強者ぞろいのAPLO。 もう少し問題を単純にすればJOLでもギリギリ出せるレベルだと思う。

統語問題としてはド典型の形(ただし考えないといけないことはかなり多い)で演習価値の高い問題。

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