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Huling 全記事

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北大言語学サークル Huling の構成員による記事の一覧
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#北大言語学サークル

【活動記録】2024年 6月期

北大言語学サークルです! 先月に引き続き、6月期の活動内容をご紹介します! 言語学サークルの活動を知りたい方、参加できなかった回の内容が気になる会員の方など、是非ご活用ください! 6/3(月)「八重山語」5月23日に公開された「標準日本語との対照から学ぶ八重山語の音韻」の記事の内容を解説する回を設けました。 実際の単語の例を用いながら音韻対応を紹介したほか、方言区画論や音素設定など、学術上の基礎的な概念を改めて確認することができました。 特に、石垣方言のアクセントの体系

アイヌ語 輪読会レポ #9

北大言語学サークル所属のもけけです。 本記事は、6月13日に行われた第9回アイヌ語輪読会の学習記です。 第9回では、第25課「時間表現(3)継続と結果」、第26課「不定人称文と受け身文」、第27課「尊敬表現」の内容を扱いました。 学習内容第25課「時間表現(3)継続と結果」 第25課では、アイヌ語の時間表現に関して、主に進行状態を表すと考えられそうな kor an と、主に結果状態を表すと考えられそうな wa an という二つの形式の使い分けを学習しました。 輪読会では

アイヌ語輪読会レポ #8

こんにちは、北大言語学サークルのちょぬです。 こちらの記事は第8回アイヌ語輪読会の学習レポートです。 今回は、第22課「名詞化辞と形式名詞」、第23課「時間表現(1)―時間副詞と過去、完了の助動詞」、第24課「時間表現(2)―意志、未来、推量の表現」の内容を扱いました。 学習内容第22課「名詞化辞と形式名詞」 名詞化辞と形式名詞は、共に前の内容を従属節化する機能を持っています。例えば、名詞化辞 ruwe を用いて次のような文が作れます。 poronno cise an

現代のJ-POPに見る琉球八重山語

北大言語学サークル所属のもけけです。 先月公開した「標準日本語との対照から学ぶ八重山語の音韻」の記事を親しみやすく感じてもらえるように、八重山語の音韻論と関連させながら現代のJ-POPの歌詞を見ていく記事を書いてみることにしました! この記事を読む前や読んだ後などに「標準日本語との対照から学ぶ八重山語の音韻 後編」を読んでいただければ、楽しみながら理解を深めていくことができるかと思います。 BEGIN「島人ぬ宝」言わずと知れたBEGINの名曲、いわゆる「沖縄ポップス」の中

【活動記録 特別編】北大祭2024

北大言語学サークルです! 今回の記事では、6月7日から6月9日にかけて開催された「北大祭2024」での活動の内容を紹介します! 今年の北大祭では、文系祭の中の企画「書房Metis」として、北海道大学短歌会様、北大推理小説研究会様、北大文芸部様との合同出店を行いました。 昨年と同様、約250部の冊子を用意して無料配布を行いましたが、無事に全て配布することができました。 ご来場いただいた皆様、宣伝してくださった皆様、改めて本当にありがとうございました! また、会員の私物の書

アイヌ語輪読会レポ #7

こんにちは、北大言語学サークルのfugashiです。本記事は、サークルで行われているアイヌ語輪読会第7回のレポとなっております。過去のレポについてはこちらを参照してください。 第7回では、アイヌ語文法の基礎第19課「普通名詞の人称変化」第20課「位置名詞の人称変化」第21課「連体修飾表現」について学びました。 学習レポ第19課「普通名詞の人称変化」 アイヌ語の普通名詞(位置名詞に対置される概念です)は、「AのB」のような誰かに所属することを表現するとき、しばしば人称変化を

【活動記録】2024年 4-5月期

北大言語学サークルです! サークルの活動も三年目となりましたが、今年も、幅広いテーマを扱って充実した活動を行うことができているように思います。 そこで、試験的に、日々の活動の内容を記録してみることにしました! 私たちのサークルの活動を知っていただくほか、既に会員の方も、参加できなかった回の内容を覗いてみるなど、幅広い目的で利用していただければ嬉しく思います。 4-5月は新歓や北大祭の話し合いも行っていましたが、テーマを設定した活動としては、以下の5つの内容を扱うことができ

標準日本語との対照から学ぶ八重山語の音韻 後編

北大言語学サークル所属のもけけです。 第2回の今回は、いよいよ、八重山語の音韻というテーマに関して、音素とアクセントの内容を中心に紹介していきたいと思います。 八重山語の音素ここでは、中本(1976: 217-228)を参考にしながら、八重山語の音素について標準日本語との音韻対応を整理します。その際、標準日本語の音韻体系と変わらずに対応が見られる音素については割愛し、異同のある部分や例外的な部分を中心に紹介していきます。 なお、前回の記事でも確認したように、琉球諸語は島ご

標準日本語との対照から学ぶ八重山語の音韻 前編

北大言語学サークル所属のもけけです。 全2回に亘る本記事では、琉球諸島の南部に位置する八重山諸島で話される言語である「八重山語」の音韻的な特徴について、日本語の標準語(標準日本語)と対照して関係を確認しながら紹介していきます。 第1回の今回は、そもそも八重山語とはどのような言語なのかを簡単に紹介していきたいと思います。 琉球諸島と琉球諸語琉球諸島とは、北から順に奄美諸島、沖縄諸島、宮古諸島、八重山諸島からなる諸島であり、八重山語は、その中の八重山諸島を中心に話されている言

映画「ボブ・マーリー:ONE LOVE」とパトワ

先日5月17日に映画「ボブ・マーリー:ONE LOVE」(原題 Bob Marley: One Love)が日本でロードショーされました。 (主にダンスホール・レゲエですが)レゲエを聴くことが少なくないのもあり、私も公開当日に早速見てきました。 映画を見て、私が感銘を受けたことの一つに、言語の使用があります。というのも、映画全編にわたってパトワで脚本が書かれ、主演のKingsley Ben-Adirを始めとした俳優陣も基本的にパトワで演じているのです。パトワは、レゲエシーン

グライス語用論 概説 後編

北大言語学サークル所属のもけけです。 第3回の今回は、ここまで見てきたグライスの公理の問題点を指摘し、それを再検討して発展させた理論であるホーンの理論を紹介します。 グライスの公理の問題点前回までで確認してきたように、グライスの公理は、発話が字義通りの意味とは異なる「推意」を生じる仕組みについて説明を加えたという点で非常に画期的なものと言えますが、問題点も考えることができます。 第一に、公理の数です。グライスは四つの公理について「カントにならって(グライス 1998: 3

グライス語用論 概説 中編

北大言語学サークル所属のもけけです。 第2回の今回は、前回確認した「推意」の具体的な例を確認しながら、公理の逸脱の類型についても整理していきます。 前回の内容の疑問点概説書などでは、前回の記事で確認したような原理・公理・推意の内容で説明を終えている印象がありますが、個人的には「公理がどのように逸脱されるのか」を考えることも重要だと考えます。 なぜなら、前回の内容を厳密に考えてみると、次のような疑問が生じてくるからです。 すなわち、推意が生じるような発話において、あくまでも

グライス語用論 概説 前編

北大言語学サークル所属のもけけです。 全3回に亘る本記事では、文脈(コンテクスト)から得られる情報を考慮に入れた上で言語使用を研究する言語学の一分野である「語用論」の中から、その黎明期に分野の確立に大きく寄与したポール・グライスが提唱した理論を紹介し、その後の研究で再編された理論についても紹介していきます。 グライス語用論グライス語用論とは、概略、発話の意味について字義通りの「言われた事柄(what is said)」と言外に示される「推意された事柄(what is imp

パトワ(ジャマイカ・クレオール語)文法概説

ジャマイカ・クレオール語は一般にクレオールとされる言語の中でもかなり話者が多く, また私たちにとっても(特にレゲエ・リスナーにとっては)身近なクレオールです. ですが, インターネット上にその文法を解説した日本語の文章はほとんどありません. そこで, 今回は自分の学習のまとめも兼ねてジャマイカ・クレオール語の文法についてまとめていこうと思います. 内容については学習が進み次第更新しようと思っています. ジャマイカ・クレオールとは?ジャマイカ・クレオール語(Jamaica