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Huling 全記事

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北大言語学サークル Huling の構成員による記事の一覧
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記事一覧

イテリメン語の否定とその現実性について

2024年7月12日、北海学園大学の小野智香子研究室と北海道大学言語学サークル Hulingの共同開催という形で、北海学園大学の教授である小野先生に特別講義をしていただきました。詳細については、こちらもご参照ください。 講義は、「イテリメン語における否定」というテーマでした。以下の記事は、その時講義いただいたものをもとに、イテリメン語の否定についてまとめ直すものです。 イテリメン語の否定諸形式詳しくは小野(2016:233-246)や書籍『イテリメン語文法 -動詞形態論を

バンバラ語 概説 文法編

北大言語学サークル所属のもけけです。 バンバラ語の概要や音韻について紹介した前回の記事に続いて、今回の文法編では、形態・統語に関する文法面の内容を紹介します。 人称代名詞バンバラ語の人称代名詞は、通常、以下の通りです。 文の構造バンバラ語は、古典的類型論においては「孤立語」に分類され、名詞のみならず人称代名詞に至るまで、格変化を生じません。(小森 2023: 182-183) 主語や目的語といった項は、主として語順によって判断され、それ以外の付加詞は後置詞による標示を受け

バンバラ語 概説 音韻編

北大言語学サークル所属のもけけです。 音韻編と文法編の全二回に亘る本記事では、西アフリカに位置するマリ共和国を中心に話される「バンバラ語」という言語について紹介します。 バンバラ語って何?バンバラ語は、西アフリカのマリ共和国やコートジボワールを中心とする地域で話されている言語で、話者数は約400万人とされています。 言語系統としてはニジェール・コンゴ語族マンデ語派に属すると考えられており、小森(2023: 176)によれば、セネガルのマンディンカ語(マリンケ語)やギニアの

【活動記録 特別編】小野智香子先生 講演会

北大言語学サークルです! このたび、当サークルでは、日本における「イテリメン語」の研究の第一人者であり、北海学園大学工学部で教鞭を執っていらっしゃるフィールド言語学者の小野智香子先生とのご縁があり、貴重なお話を伺う機会をいただくことができました! 今回の記事では、7月12日(金)に北海学園大学豊平キャンパスにて開催された講演会に関する活動内容を紹介します! また、7月期は期末期間であり、通常活動を行うことができたのは7/4(木)のみでした。本記事では、7月期の活動記録を兼ね

アイヌ語輪読会レポ #10

こんにちは、北大言語学サークルのfugashiです。本記事は、サークルで行われたアイヌ語輪読会第7回のレポとなっております。過去のレポについてはこちらを参照してください。 第10回では、アイヌ語文法の基礎第28課「抱合」、第29課「分離動詞」、第30課「使役」を扱いました。 学習レポ第28課 「抱合」 アイヌ語は、抱合を行う言語の中でも比較的珍しく、自動詞主語や他動詞主語の抱合を行う言語です。しかし、全ての自動詞主語や他動詞主語が抱合の対象となるわけではなく、佐藤(20

【活動記録】2024年 6月期

北大言語学サークルです! 先月に引き続き、6月期の活動内容をご紹介します! 言語学サークルの活動を知りたい方、参加できなかった回の内容が気になる会員の方など、是非ご活用ください! 6/3(月)「八重山語」5月23日に公開された「標準日本語との対照から学ぶ八重山語の音韻」の記事の内容を解説する回を設けました。 実際の単語の例を用いながら音韻対応を紹介したほか、方言区画論や音素設定など、学術上の基礎的な概念を改めて確認することができました。 特に、石垣方言のアクセントの体系

アイヌ語 輪読会レポ #9

北大言語学サークル所属のもけけです。 本記事は、6月13日に行われた第9回アイヌ語輪読会の学習記です。 第9回では、第25課「時間表現(3)継続と結果」、第26課「不定人称文と受け身文」、第27課「尊敬表現」の内容を扱いました。 学習内容第25課「時間表現(3)継続と結果」 第25課では、アイヌ語の時間表現に関して、主に進行状態を表すと考えられそうな kor an と、主に結果状態を表すと考えられそうな wa an という二つの形式の使い分けを学習しました。 輪読会では

アイヌ語輪読会レポ #8

こんにちは、北大言語学サークルのちょぬです。 こちらの記事は第8回アイヌ語輪読会の学習レポートです。 今回は、第22課「名詞化辞と形式名詞」、第23課「時間表現(1)―時間副詞と過去、完了の助動詞」、第24課「時間表現(2)―意志、未来、推量の表現」の内容を扱いました。 学習内容第22課「名詞化辞と形式名詞」 名詞化辞と形式名詞は、共に前の内容を従属節化する機能を持っています。例えば、名詞化辞 ruwe を用いて次のような文が作れます。 poronno cise an

現代のJ-POPに見る琉球八重山語

北大言語学サークル所属のもけけです。 先月公開した「標準日本語との対照から学ぶ八重山語の音韻」の記事を親しみやすく感じてもらえるように、八重山語の音韻論と関連させながら現代のJ-POPの歌詞を見ていく記事を書いてみることにしました! この記事を読む前や読んだ後などに「標準日本語との対照から学ぶ八重山語の音韻 後編」を読んでいただければ、楽しみながら理解を深めていくことができるかと思います。 BEGIN「島人ぬ宝」言わずと知れたBEGINの名曲、いわゆる「沖縄ポップス」の中

【活動記録 特別編】北大祭2024

北大言語学サークルです! 今回の記事では、6月7日から6月9日にかけて開催された「北大祭2024」での活動の内容を紹介します! 今年の北大祭では、文系祭の中の企画「書房Metis」として、北海道大学短歌会様、北大推理小説研究会様、北大文芸部様との合同出店を行いました。 昨年と同様、約250部の冊子を用意して無料配布を行いましたが、無事に全て配布することができました。 ご来場いただいた皆様、宣伝してくださった皆様、改めて本当にありがとうございました! また、会員の私物の書

アイヌ語疑問文について:最近考えたこと・話したこと

北大言語学サークルのfugashiです。 アイヌ語疑問文は、以下の疑問点に示すように特殊な構造をしています。アイヌ語輪読会では、ここ数回で統語に関係する内容を扱っていたのですが、その際にアイヌ語疑問文の構造について疑問が生じたので、皆さんの意見もお聞きしたくまとめました。 疑問点tanpe hemanta an. *tanpe hemanta ne. tanpe hemanta ne ruwe an. アイヌ語疑問文では、上に挙げたように、”あれは何か?”という疑問文

英語の発音記号とIPAの違い

本稿では一般米語(General American, GA)の発音記号とIPAを比較し、主な相違点について説明します。これを読めば、単語についている発音記号と実際の発音が違って聞こえるという謎が解決されるかもしれません。 / /と[ ]の違い私の体感では、発音記号に使う括弧は/ /より[ ]が多く使われている印象です。しかし英語の発音記号は英語の音素を表記したものですから、IPAの規則で考えれば/ /で囲むのがより正確だと思います。 母音図1~5は、IPAで定義された母音

アイヌ語輪読会レポ #7

こんにちは、北大言語学サークルのfugashiです。本記事は、サークルで行われているアイヌ語輪読会第7回のレポとなっております。過去のレポについてはこちらを参照してください。 第7回では、アイヌ語文法の基礎第19課「普通名詞の人称変化」第20課「位置名詞の人称変化」第21課「連体修飾表現」について学びました。 学習レポ第19課「普通名詞の人称変化」 アイヌ語の普通名詞(位置名詞に対置される概念です)は、「AのB」のような誰かに所属することを表現するとき、しばしば人称変化を

【活動記録】2024年 4-5月期

北大言語学サークルです! サークルの活動も三年目となりましたが、今年も、幅広いテーマを扱って充実した活動を行うことができているように思います。 そこで、試験的に、日々の活動の内容を記録してみることにしました! 私たちのサークルの活動を知っていただくほか、既に会員の方も、参加できなかった回の内容を覗いてみるなど、幅広い目的で利用していただければ嬉しく思います。 4-5月は新歓や北大祭の話し合いも行っていましたが、テーマを設定した活動としては、以下の5つの内容を扱うことができ