これも親ガチャ?(第9話)

呼び出しても、逃げ出してなかなか捕まらない俺に
上級生も怒りがMAXになったらしく、
ホームルーム中に廊下に15人並んでいた。
先生もビビって、何も注意しねえ。
なるほどね!
俺は、カバンから袋を出し、
教科書を全てカバンに詰め込むと
袋に上靴をいれ、袋に入ってた靴を履いた。

『あっ、先生、緊急事態だから。さようなら!』
俺は、廊下とは反対の窓に足をかけ外に出た。
2階だが、雨どいが新しかったので、それを伝って降りた。
不意を突かれた上級生は走って階段を降りるが間に合わない。
とりあえず脱出完了。

‘明日は、遅刻して行くかな?’
そんな事を考えながら歩いてると
河合真奈が待っていた。
『よう!』俺の挨拶には反応せず、
『相田君、何してるの?
今日、私の学校の悪が来て、
「あんた、相田の彼女?」とか聞いてきたんだけど、
相田君、あんなのと付き合ってるの?』
と血相をかいて問い詰めてきた。
一応は俺の事を気にかけてくれてるらしい。
『あら~、真奈のとこにも行ってるんだ~。
そろそろ会ってくるかな~?』とか
言いながら、家に帰った。
河合真奈も、俺に聞きたいことが山ほどあるらしく、
俺の家までついて来た。
『実はさ~、上級生の呼び出しをほったらかしたり、
逃げたりしてんのよ。
今日も、クソ先輩方が廊下に15人も並んでんだぜ!
担任は何も言えねえし。
窓からエスケープしたら、大急ぎで追いかけてくんの。
そう言えば、窓から降りてたバカいたけど、
落っこちてねえよな?
良くて捻挫、悪くて骨折とか・・・。』
などと世間話しの様に話てると
『ダメだよ、相田君。そんな悪い奴と付き合っちゃ、ダメ。』
河合真奈は必死に俺を説得しようとした。
‘俺の事、そんなに気にしてくれるんだ!
そっか、じゃあ、これ以上迷惑をかけらんねぇ~な~。’
とか無言で考えてたら、
俺を見ながら真奈が泣きだした。
すると、それを見ていた身体が
アタフタと落ち着かなくなる。
‘君ら、本当に仲が良いんだね。’
俺はそう思って、フォローを入れたかったけど、
やっぱり、何も言わないことにした。
『明日、上級生と話着けてくるわ!』
とか言ったら、余計でも真奈が心配しそうだから
嘘にならない様に黙ることにした。


翌日は、朝早くから、教室に上級生が来ていた。
教室に入る前に囲まれた。
『もう、逃がさんからな!』1人が息巻いていた。
体育館の裏側まで連れて行かれたら、先客がいた。
正だった。顔に痣があった。
多分、殴られたんだろう。
『おはよう、正。なんだか、悪い事したみたいね、俺。』
俺は、上級生を無視して、正に声をかけた。
『お前、何、無視してんだ!』
頭、張ってるらしい上級生が殴りかかってきた。
かわすと、俺が逃げない様に後ろにくっついてた上級生にあたった。
『あら、痛そう~』
つい、しゃべっちゃったのが悪かった。
頭張ってる上級生は、マジ切れして、
蹴りまで出してきた。
だが、他の奴は参戦してこないようだ。
‘集団リンチかと思ったら、律儀だね。
じゃあ、人間盾になってもらおうかな?’
囲んでいる上級生が俺を掴もうとする腕の関節を極め、
俺の前に引きずり出した。
そして、頭張ってる上級生がそいつを殴る蹴るする。
4回繰り返したところで、俺を囲む奴が居なくなった。
『てめえ、相田先輩の息子だからって、
もう、許さねえ~ぞ!』
俺は、初めて知った。ここは、父親の縄張りだったらしい。
『俺を相田先輩の子供と知って、リンチかけてるんだ~。
へ~、あんた凄いね。』
とっさに言ったこのセリフは、意外に良いジャブになった。
周りがうろたえたのだ。
俺は続けた。
『で、先日、その相田先輩を俺が動けない状態にしたことは知ってるか?
俺は、えげつないよ。膝が折れて動けない父親の顔を蹴ったり・・・。
なあ、正、お前、見てたよな。』俺は、正に振った。
正は、頷いて
『相田君、卒業式でお父さんの襲撃に合って、
倒しちゃったんだよ。
警察沙汰になったけど・・・。』
正の言葉を遮るように俺は畳みかけた。
『これ以上やるなら、遠慮しねえよ。
1年の間は大人しくしてようと思ってたんだけど、
幼馴染の女の子まで追い込まれるとさ~』
米田と呼ばれてた上級生の頭は『なんだ、それ?』と反応した。
だが、もう殴りかかる意思は見えなかった。
『隣の中学に彼女がいるバカ、誰だよ。』
俺は、声を張り上げた。
すると俺を取り巻いてる外側の男が手を上げた。
俺よりも米田の方が先にかみついた。
『お前、俺に恥かかせてねえだろうな?
1年相手に、姑息な手を使ってねえよな。』
俺は、そのうろたえてる先輩に突っ込んでいき、
顔面に思いっきり拳骨をめり込ませた。
見せしめだった。力の抜けてる相手に渾身の一発を入れると
相手は吹っ飛ぶ。それを狙った。
先輩よりも10cmは大きい俺が体重をのっけて殴る。
案の定、周りの先輩どころか、米田も言葉を失った。
‘決まったな!げっ、俺の拳から血が出てる。
かわいそう先輩、あごの骨、折れてるかも?’
などと思いながら、
『正、行こうぜ。』と俺は正に声をかけ、
一緒に教室に帰った。

放課後になると、担任が落ち着かない表情でホーム―ルームを始め、
廊下に誰もいないことを確認するたびに、俺をチラッとみる。
たった20分の間に5回もやられるのは
イラっとくるが今日は静かにしていた。
さすがに、あごを砕かれた先輩の親が
来てるんじゃないかと思ったが
3日経っても、職員室からの呼び出しは無かった。
3日目の放課後、正と一緒に帰った。
すると、河合真奈もバス停で待っていた。
ちょうど、先輩たちの動きを知りたかったので、
呼び出す手間が省けた。
『あんた、何したのよ!』
いきなりの河合真奈のセリフに
‘しまった、こっちに仕返しに行ったか!
読みが甘かった。’と思ってたら、
『私の中学の悪が悲壮な表情でいうのよ。
「私らが悪かった。もう、あんたに関わらないから
彼氏に許してくれるように頼んでくれよ。頼むよ。」
って、10人も来るのよ。
生きた心地がしなかったわよ、私。
何したのよ。』
‘な~んだ、心配して損した。’
そう思いながら、正を見ると、
正も俺を見ていた。
『クックックッ、あははは!』
正と俺は同時に笑い出した。
真奈だけが仏頂面で俺たちを見ていた。
『相田君、成功だね。
僕も殴られた甲斐があったよ。』と正が言った。
『えっ、佐藤君、殴られたの?
あんた、本当に何してんの?
佐藤君を犠牲にして。』真奈はもう収まらなくなってた。
『あ~、腹いてえ~、真奈。
ごめんごめん、全部話すから、
俺んちに来いよ。
正、お祝いだ!奢るから、コンビニに行こうぜ。』
呑気なもんで、この1件が、
隣の市の悪を呼び込む噂のもとになるとは
想像もしていなかった。
ただ、部屋に着くと、茜が居た。
この件は茜に知られると面倒なので、
また、部屋で話すことにした。
『今日は、茜の分を買ってきたよ。
ショートケーキ。先に食べててね。』
これで上手くいくはずだったのに!
『こんにちは。お・ば・さ・ん!』
真奈の悪質な爆弾に茜がマジ切れしそうになる。
茜に頼み込んで抑えてもらい。
真奈を部屋に押し込んだ。
‘うわ~、めんどくさ~。
真奈を一時、出禁にするしかねえな!
今夜から、また、茜がめんどくせえな。’


世の中は、少し好景気に入りつつあった。
サウジアラビアの石油を原料にした水素ガス分離施設が
本格稼働して2か月ほどが経って、
日本では水素ガス発電や水素ガス長距離トラックの運用が始まっていた。
やはり新業態が始まると活気づくし、夢がある。
政府が本気度を見せたことで、
企業の本格参入が目に見えて増えてきた。
国策のすごさを肌で感じられる今の俺は幸せだと思った。
これだけ感動してるってことは、
前世の俺は味わったことのない世界観ではないかと
思い始めている。
そうそう、活気づくと言えば、
北朝鮮対策が進み始めている。
この田中総理、すごいことをやり始めた。
北朝鮮の労働力を
サハリン地区の天然ガス開発と野菜プラント工場とのタイアップに
提案しているようなのだ。
これには、アメリカが難色を示したが、
サハリン地区にアメリカ企業の誘致もしていて、
アメリカのメディアが歓迎したもので、
アメリカ政府の不満は闇の中にフェイドアウトした。

アメリカへの決定打は、
外貨が一気に入って来て、
急速に富裕になった北朝鮮の総書記が
田中総理と友好通商条約と不可侵条約を
一気に結んでしまった事だった。
韓国とアメリカが不満だらけなのは言うまでもない。
中国が沈黙を守り、
日本にかなりのフォローをしているのが可笑しかった。
それもそのはず、サハリン・中国間の鉄道網と
パイプラインのインフラを日本がレンタルする約束をしていたようなのだ。
その材料も中国品と日本品を
半々で使う約束だ。中国の国益はかなりのものだ。
やはり田中総理、タダ者ではない。
中国と北朝鮮を一気に傀儡してしまった。
ロシアは気が気ではないのだろう。
その年の暮れに、EUとロシアの友好通商条約が結ばれることになった。
世界は、裕福な平和な方向性を色濃くしていった。


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