これも親ガチャ?(第13話)

中学2年の冬、中学校の先生達は
俺らに進路について色々と考える時間を作ってくれた。
森先生の発案で、今年からの試みだそうだ。
‘少し間違えば、すごい大人を敵に回すところだった’
そう思った俺は、少し寒気がした。
だが、俺自身の運の良さも実感した。
人の縁て、バカにできない。マジで、そう思った。
今回の試みは、この学校の生徒の進路傾向にも
理由があったようだ。
この中学校の生徒は、高卒で就職をさせたい家庭が多く、
工業系、商業系の高校の進路希望が多い感じだった。
正もその一人で、公立の工業高校を目指すのだそうだ。
森先生の試みは、中学を卒業するまでの1年数か月の間、
3回と「贈る言葉の回」の計4回、実行された。
初回は、2年生と3年生を体育館に集め、
工業高校に行くことが、どういうことになっていくのか?
卒業生のサンプルを10種類に分けて説明してくれた。
それは、努力家で運が良い人ばかりのケースを紹介したものだと
しつこいほど教頭が言っていた。
そして、商業高校のケース、
進学校若しくは、工業高校、商業高校からの
公務員受験のケースの3通りを説明してくれた。
俺の中のおっさんの記憶を正確に思い出せないが、
ここまでの思いやりのある進路授業は
日本全国を探しても、例が無いのではないかと思った。
3年生の一部の生徒は、なんで去年からしてくれなかったのかと
担任達に噛みついたほどだ!
そんな活気に満ちた授業の後、俺は正と帰宅していた。
『僕、進路について、
もう一度、考えてみるよ。』と正も言ってた。
3年生の狼狽ぶりを目の当たりにして
時間がある分、真剣に計画を立ててみようと思ったようだ。
『相田君は、もちろん、進学だろう?』
正は、思い出したように俺に聞いた。
俺は、まだ、正にも、誰にも進路の話をしたことが無かった。
借りた身体をいつ戻すことになるのか解らなかったから、
‘俺の記憶や意識が無くなっても、
相田勉が困らない状態にはしておきたいな!’
という観点で考えてはいた。
でも決めかねていた。
正に、どこから話そうかと考えていたら、
バス停で待ちぶせしていた真奈に会った。
『真奈ちゃん、こんにちは。』正が声をかけた。
『あんた達、仲がいいよね!』
ちょっとジェラシーを含んだ感じで真奈が言った。
『真奈ちゃんは、進路、どうするの?
今ね、相田君と話してたんだ。』
正はいきなり質問して、理由を後付けした。
真奈は進学校への進学希望で、
この辺りで1番の高校に入るそうだ。
塾の時間をまだ増やすとか言ってた。
『真奈ちゃんに会った時、
ちょうど、相田君の進路を聞いてたとこなんだ。』
真奈の答えを聞き終えた正が、話を戻した。
『それ、私も聞きたい!じゃあ、今から、相田君の家に集合ね。
私、シュークリームとカフェオレでいいわよ。』
『はいはい!真奈は、そのつもりで待ってたんだろ?
正も来るよな。』
正は、ちょっと考えてから断ろうとしたが
俺が強引にコンビニまで連れて行った。
『妹たちに、シュークリームを持って帰れよ。な!』


それから数日後のある日、俺は、森先生から呼び出された。
『相田君、進路が決まって無かったよね。
アンケートも白紙だったし。
あなたを見ていると
なんだか、進路は決まってる感じもするんだけど。
先生としては、進学校に行って欲しいな。
あなたなら中央高校にも入れそうな気がするし・・・。
そうそう、相田君、成績の悪い子を集めて
勉強会してるんだってね。
私のクラスの川下君や池尻君が、
相田君の教え方が解りやすいって言ってたわ。
教師になるなら、やっぱり中央高校を
目指した方が良いと思うんだけどな。』
森先生は、俺を高く評価してくれている様だ。
それでも、真奈と同じ高校は遠慮したいとこだ。
そうそう、森先生との会話に出て来た勉強会の話だけど、
別にやりたくてやってる訳じゃないんだ。
正の宿題を放課後に教室でやってたら、
1人、2人と増えて来て、
2年生の間では、俺と同じ組の奴と正の友達まで
自習に来るようになった。
そんな感じでメンツが段々と増えいったんだ。
俺らが3年生になりたての頃には、
さらに不良たちも一緒に勉強し始めた。
そして、1学期が終わる頃には、教室1つが満杯になってた。
となりのクラスから椅子を持ち込む奴もいたっけ。
もちろん、ノーギャラだ。
最初は試験嫌いだから、
再試を免れたくて努力してる奴が多かったんだ。
(今年から始まった、補講の様なもの。
公立高校に合格させてあげたい先生方の親心から始まったらしい。)
‘だったら、授業中にその努力をしたら、
放課後は自由に時間を使えるだろう!’と
思うのだけど、言わないようにしてる。
‘こいつらから「将来が不安で仕方ない」
という思いを聞いたり、
日頃『クソババ!』とか言ってるけど、
出来れば、公立高校に受かって、迷惑をあまりかけたくない’
と思っている事とか聞いちまうと
文句も言えなくなってきたんだ。
でも、毎朝新聞配達している俺には、
ちょうど睡魔が襲う時間で大変なんだ。
だから、資産もそこそこ出来たし、新聞配達を止めようと
新聞販売店の社長に相談したんだ。
『今まで、面倒見てやったろ?もう少し、頑張ってよ。
お前ほどの奴はなかなかいないんだよ。』と泣きつかれた。
‘やっぱ、毎朝は、大変だもんな!新聞配達って、人材難なのか?
これって、商売にならないかな?’
ふと、そんな考えもよぎったが、
‘いやいや、このままじゃあ、
身体が持たないでしょう!’と思い直した。
‘さあ、どうしたものか?
とりあえず、ラブホの仕事だけでも辞めさせてもらうかな?’
とラブホの社長に相談すると、今度は社長から脅されるんだ。
『あれ?勉!俺たちギブ&テイクでやってたんだよな~。
この間、助けてあげたよね~。
どうだろう、もう少し、時間を増やすってのは?』
とか言ってきた。さすが社長、抜け目ないわ!
ほとほと困って、家で考え事してると
『ねえ、ム~君。最近、ちゃんと私の話を聞いてくれてない!
前は、もっと優しかったよ!』と茜にまで責められる始末。
こうなると茜は超めんどくさい。
『ねえったら?!』って、俺の布団に入ってくる。
仕方なく、茜の頭をさすりながら、狭いベッドで一緒に寝ることになる。
ついつい眠れなくて、机に座って考え事をする。
‘さあ、どうする俺!
なんだか、卒業後の暗示みたいで嫌だな~・・・グ~・・’
考え事の最中に寝てたらしい。
目覚ましの音で目が覚めた。机の上で眠ってた。
‘身体、痛え~、でも、約束は約束!とっとと新聞配達を済まそう。’
頭を切り替えて、新聞配達に出かける。そんな日々が続いた。


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